
耐震構造とはなにか簡単に解説!種類や特徴|免震構造との違いは?
公開日:2025年04月14日
この記事では、耐震構造とは何かを簡単に解説します。
耐震構造とは、建物を強化し、地震に耐えられるようにする仕組みであり、倒壊を防ぐために設計されています。これは建築基準法に基づいて設計され、地震発生時の倒壊を防ぐシステムです。また、新築とリフォームでは導入費用が異なり、後から耐震補強を行う場合は追加の工事が必要になります。
この記事では、耐震構造の特徴や費用についても詳しく解説します。地震に強い住宅を検討している方や、リフォームを考えている方はぜひ参考にしてください。
【この記事でわかること】
- 耐震構造とはなにか簡単に解説
- 耐震構造の特徴
- 耐震構造の注意点
- 耐震構造の工事費はいくら?
耐震構造とはなにか簡単に解説
耐震構造とはなにかを以下で簡単に解説します。
- 耐震構造の仕組み
- 制震構造・免震構造との違い
耐震構造の仕組み
耐震構造とは、地震の揺れに強い建物の構造のことです。建物はもともと重力に耐えるように作られているため、上下の揺れには比較的強い特徴があります。しかし、地震の揺れは上下だけでなく、左右の揺れや建物の接合部分にかかる回転する力も発生します。耐震性が低い建物は、これらの力に耐えられず倒壊のリスクが高まります。
そこで、あらゆる揺れに対応できるように設計されたのが耐震構造です。柱や壁を強化し、建物全体のバランスを考えた設計をすることで、安全性を高められます。
制震構造・免震構造との違い
耐震構造は、建物自体の強度を高め、揺れに耐える仕組みです。地震の衝撃を直接受け止めるため、構造はシンプルですが、揺れが室内に伝わりやすく、家具の転倒や落下といった二次被害のリスクが高まる傾向があります。これに対し、制震構造は、建物内部にダンパーを組み込むことで揺れのエネルギーを吸収し、建物の損傷を軽減する仕組みです。特に高層建築で効果を発揮し、大きな揺れだけでなく、長時間続く揺れにも対応できます。
免震構造は、建物の基礎部分に特殊な装置を設置し、揺れそのものを建物に伝えにくくするのが特徴です。室内の被害を最小限に抑えられますが、縦揺れへの効果は限定的であり、また、導入にあたってのコストも他の構造に比べて高くなる傾向があります。
耐震構造の特徴
以下で耐震構造の特徴について解説します。
- 強風にも対応できる
- 地盤や立地の影響を受けにくい
- 一般住宅に適用しやすい
順番に見ていきましょう。
強風にも対応できる
耐震構造は、地震だけでなく強風にも強いというメリットがあります。特に台風や突風など、日本では風による被害も少なくありません。耐震構造を取り入れていない建物では、強風時に建物の壁面に大きな圧力がかかるため、構造によっては壁が変形したり、屋根が飛ばされたりすることがあります。
しかし、耐震構造では、強い骨組みやしっかりとした接合部が確保されているため、風の力にも耐えられます。
さらに、制震ダンパーを備えた制震構造や、免震構造を採用すれば、風による揺れをさらに抑えることが可能です。
特に高層マンションやビルでは、風による横揺れが問題になることがありますが、これらの構造を取り入れることで、より快適に過ごせるでしょう。
地盤や立地の影響を受けにくい
建物の安全性を考える上で、地盤の強さや立地の影響は避けて通れません。柔らかい地盤に建てられた建物は、地震時に大きく揺れる可能性があり、倒壊リスクも高まります。
しかし、耐震構造を採用した建物であれば、揺れに耐える力が強く、地盤の影響を最小限に抑えられます。特に、免震構造を取り入れることで、建物と地面を切り離し、地震の揺れを直接建物に伝えにくくすることが可能です。
地盤が弱い地域でも、基礎部分を強化し、耐震技術を活用することで、安全性を向上させられます。
また、山間部や傾斜地に建てる場合も、耐震構造を適切に設計することで、崩落や地すべりのリスクを抑えられます。家を建てる際は、地盤の強度を確認し、適切な耐震対策を施すことが重要です。
一般住宅に適用しやすい
耐震構造は、一般住宅でも取り入れやすいのが大きな利点です。特別な技術や高額な設備を必要とせず、比較的シンプルな工法で実現できるため、新築住宅だけでなく、リフォームや耐震補強にも適しています。例えば、柱や梁の補強、壁の補強、耐震金具の設置など、部分的な対策を講じることで、既存の住宅でも耐震性能を向上させられます。
また、木造住宅や鉄筋コンクリート造など、建築の種類を問わず対応できる点も魅力です。建物の構造に合わせた補強方法を選べば、コストを抑えつつ耐震性を高めることが可能です。
耐震構造の注意点
耐震構造の注意点は以下のとおりです。
- 建物自体は揺れを吸収できない
- 建物のダメージが蓄積しやすい
- 室内の家具や設備が地震で被害を受けやすい
建物自体は揺れを吸収できない
耐震構造は、建物の強度を高めることで倒壊を防ぐ仕組みですが、揺れそのものを吸収する機能はありません。
つまり、地震が発生した際には建物全体が大きく揺れるため、住んでいる人が強い揺れを直接感じることになります。特に高層建築では揺れが増幅しやすく、不安を感じることも少なくありません。
また、揺れを吸収しないということは、建物の接合部分や構造体に大きな負荷がかかるため、長期間の使用による影響も考慮する必要があります。そのため、地震の多い地域では耐震補強の定期的な見直しや、追加の制震対策を検討することが重要になります。
建物のダメージが蓄積しやすい
耐震構造は一度の大地震には耐えられる設計になっていますが、繰り返し地震が発生することで建物にダメージが蓄積しやすいというデメリットがあります。特に、柱や梁、接合部などは地震のたびにわずかに歪んだり、ひび割れが生じたりすることがあります。
ダメージが蓄積すると、建物の耐震性が低下し、次の地震で倒壊のリスクが高まる可能性があります。
そのため、地震後には専門家による点検を行い、必要に応じて補強工事を実施することが大切です。
室内の家具や設備が地震で被害を受けやすい
耐震構造は建物の倒壊を防ぐことが目的ですが、室内の安全まで保証されるわけではありません。
地震の揺れはそのまま室内にも影響を与えるため、大きな家具が転倒したり、食器棚の中身が飛び出したりする可能性があります。特に、重い家具や高い位置にある収納は、地震の揺れで大きな被害を受けることが考えられます。
そのため、耐震構造の建物に住んでいても、家具の固定や転倒防止策を施すことが重要です。
また、避難経路を確保するために、倒れやすい家具を玄関や廊下の近くに置かないようにするなどの工夫も必要です。
耐震構造の工事費はいくら?
新築の場合は、設計段階から耐震・制震・免震構造を組み込めるため、比較的効率的に施工できます。一方、リフォームで後付けする場合は、既存の建物の構造を変更したり、補強したりするため、大規模な工事が必要になることが多く、費用が割高になりがちです。
以下で、新築時とリフォーム時における各耐震構造について解説します。
- 耐震構造の工事費
- 制震構造の工事費用
- 免震構造の工事費用
耐震構造の工事費
耐震構造は、建物自体の強度を高め、地震の揺れに耐えることを目的とした基本的な地震対策です。
新築時には建築基準法に基づいた耐震設計が標準で組み込まれていますが、リフォーム時には補強工事が必要となり、費用が変わってきます。耐震補強の一般的な工事費(新築で導入)は、以下の表のとおりです。
| 工事項目 | 費用 |
|---|---|
| 標準的な耐震構造 | 追加費用なし(建築費に含まれる) |
| 耐震強化(壁・基礎の補強) | 50〜200万円 |
| 鉄骨造・RC造の耐震設計強化 | 100〜500万円 |
※上記はあくまで一般的な費用目安です。
耐震補強の一般的な工事費(リフォームで導入)は、以下の表のとおりです。
| 工事項目 | 費用 |
|---|---|
| 壁の補強(筋交い・耐震パネル設置) | 10~50万円/箇所 |
| 基礎の補強(鉄筋コンクリート増設など) | 50~200万円 |
| 屋根の軽量化(瓦の交換) | 50~150万円 |
| 耐震補強全体(木造住宅30坪) | 100~300万円 |
※上記はあくまで一般的な費用目安です。
既存住宅に耐震補強を施す場合、建物の状態や築年数によって必要な工事と費用が異なります。
新築時に比べ、リフォームでの耐震補強は建物の状態によって費用が増える傾向があるため、事前の耐震診断が重要です。
制震構造の工事費用
制震構造は、建物内部に制震ダンパーを設置し、地震のエネルギーを吸収することで揺れを抑える技術です。
新築時には設計に組み込みやすいですが、リフォームで導入する場合は既存の壁や柱に取り付ける工事が必要になります。新築時に制震構造を取り入れることで、揺れを大幅に軽減でき、地震後のダメージを抑えることが可能です。
制震補強の一般的な工事費(新築で導入)は、以下の表のとおりです。
| 工事項目 | 費用 |
|---|---|
| 木造住宅の制震ダンパー設置(4~8か所) | 50~100万円 |
| 鉄骨造・RC造の制震ダンパー設置 | 100~300万円 |
| 制震構造全体(柱・壁補強含む) | 150~400万円 |
※上記はあくまで一般的な費用目安です。
リフォームで制震構造を導入する場合は、ダンパーの設置と耐震補強を組み合わせるケースが多く、費用が変動します。
耐震補強の一般的な工事費(リフォームで導入)は、以下の表のとおりです。
| 工事項目 | 費用 |
|---|---|
| 制震ダンパーの追加設置(4~8か所) | 50~150万円 |
| 制震補強+耐震補強の組み合わせ | 150~500万円 |
※上記はあくまで一般的な費用目安です。
新築よりも施工の自由度が下がるため、リフォームで導入する際は専門家のアドバイスを受けることが重要です。
免震構造の工事費用
免震構造は、基礎部分に免震装置を設置し、地震の揺れを直接建物に伝えない技術です。
新築時には導入しやすいですが、リフォームで導入する場合は基礎部分の大規模な改修が必要となり、工事費が高額になります。新築時に免震構造を採用すると、高い安全性を確保できますが、一般住宅ではコスト面がネックになることもあります。
免震補強の一般的な工事費(新築で導入)は、以下の表のとおりです。
| 工事項目 | 費用 |
|---|---|
| 木造住宅の免震工事 | 500~1,500万円 |
| 鉄筋コンクリート造の免震工事 | 1,000~3,000万円 |
| 大規模建築物(マンション・ビル)の免震工事 | 5,000万円以上 |
※上記の表はあくまで一般的な費用目安です。
既存住宅を免震化する場合、基礎を一度持ち上げて免震装置を設置するため、非常に大規模な工事が必要になります。
耐震補強の一般的な工事費(リフォームで導入)は、以下の表のとおりです。
| 工事項目 | 費用 |
|---|---|
| 木造住宅の免震改修工事 | 1,000~2,500万円 |
| 筋コンクリート造の免震改修工事 | 2,000~5,000万円 |
※上記の表はあくまで一般的な費用項目です。
リフォームでの免震化は、コストや工期の面でハードルが高いため、新築時に導入するのが一般的です。
耐震構造に関するよくある質問
以下で耐震構造に関するよくある質問について解説します。
- 耐震構造の家は震度7に耐えられる?
- 耐震構造の家は何年くらい持つ?
耐震構造の家は震度7に耐えられる?
耐震構造の家は、「震度7程度の地震が発生しても倒壊しないこと」を前提に設計されています。特に、現在の建築基準法に基づいた住宅は、大地震時でも建物が崩壊せず、人命を守ることを目的として作られています。
ただし、耐震構造は「倒壊を防ぐ」ことを目的としており、地震の揺れを軽減するわけではないため、震度7クラスの地震が発生すると、壁のひび割れや内装の損傷が起こる可能性があります。
また、繰り返し大地震が発生すると、建物のダメージが蓄積し、次第に耐震性能が低下することも考えられます。
そのため、震度7の地震に耐えられるかどうかは、新築時の設計だけでなく、築年数や耐震基準、施工の質、地盤の強さなどによって変わります。新築時に、より高い耐震等級を備えた住宅を選択することや、定期的な専門家による点検と必要に応じた耐震補強を行うことが、長く安心して住まうための重要な対策となります。
耐震構造の家は何年くらい持つ?
耐震構造の家の寿命は、建物の構造、材料、メンテナンス状況によって異なりますが、一般的な木造住宅の場合は30〜50年、鉄筋コンクリート造の場合は60〜100年程度とされています。ただし、地震の揺れを直接受け止める耐震構造は、繰り返しの地震によってダメージが蓄積し、構造的な強度が低下する可能性があります。
築年数が経過した耐震構造の家は、定期的な点検と補強工事を行うことで、より長く安全に住み続けられます。
耐震構造で地震に強い家づくりをしよう
耐震構造とは、建物の強度を高めて地震の揺れに耐えられるように設計された構造です。揺れを直接受け止めるため、シンプルでコストを抑えやすい一方で、室内の家具転倒リスクや繰り返しの地震によるダメージの蓄積といった課題もあります。
耐震構造には「制震構造」や「免震構造」との違いがあり、それぞれの特徴を理解することが重要です。
制震構造はダンパーによって揺れを吸収し、建物の損傷を軽減する仕組みです。
免震構造は基礎部分に特殊な装置を設置し、揺れそのものを建物に伝えにくくすることで、室内の被害を最小限に抑えます。
また、耐震構造の家は新築時とリフォーム時で導入費用が大きく異なります。
新築時は設計に組み込みやすい一方、リフォームでは大規模な補強が必要になることが多く、費用も高額になりがちです。そのため、事前に耐震診断を行い、適切な補強計画を立てることが重要です。
記事監修
染矢 真紀
宅地建物取引士/整理収納アドバイザー1級/フードスペシャリスト/一級衣料管理士
ディスプレイ器具リースの前職を経て、整理収納アドバイザーとして独立。多くの住まいの整理・お片付けをコンサルティングした後オープンハウスに入社。契約後のお客様の引き渡しまでのサポート業務に従事し、2021年度社内賞(顧客満足賞)受賞。お客様の生活スタイルをお伺いした上での的確な提案を得意とする、衣食住のスペシャリスト。
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