この記事では、新築住宅の固定資産税について解説します。
新築住宅には、毎年固定資産税が課されます。そのため、新築住宅の購入を検討する場合はローンだけでなく、固定資産税を含めた資金計画を考慮する必要があります。
固定資産税は概ね年間5〜15万円ほどかかります。ただし、物件によって異なるので事前にシミュレーションすることがおすすめです。
この記事では、固定資産税の目安や、計算方法、軽減措置などについても解説するので、ぜひ参考にしてください。
【この記事でわかること】
固定資産税は、土地や建物といった不動産を所有している人に対して毎年課される地方税です。この税金は、地方自治体(市区町村や特別区)の財源となっており、公共サービスの維持やインフラ整備に使われます。
固定資産税について、上記の3点を押さえておきましょう。
固定資産税の課税対象は、以下の固定資産に対して課されます。
固定資産の分類 | 概要 |
土地 | 住宅用地、商業用地、農地など |
建物 | 住宅、事務所、店舗、工場など |
償却資産 | 事業用の設備や機械など |
※参考:地方税制度|固定資産税|総務省
毎年1月1日時点でその資産を所有している人が課税対象となります。
地方自治体によって年に1度決定される固定資産税の課税額を、数回に分けて納税する必要があります。多くの自治体で、年4回に分けて納付する仕組みが取られています。
一般的には、上記の時期になっています。詳しく知りたい人は、各自治体の納税通知書をご確認ください。
固定資産税の支払い方法は、自治体によって定められています。納税通知書に詳しく記載されているので、しっかりと確認しておきましょう。
一般的には、以下のような納税方法があります。
自分が払いやすい方法を選択しましょう。
新築住宅の購入後、1年目にかかる固定資産税の目安は以下のとおりです。ただし、建物と土地の購入金額の比は6:4、かつ以下を条件とします。
【条件】
※ここでは、200㎡超の部分(一般住宅用地)の特例は適用しないものとする
※実際の評価額は異なる場合があります
購入価格 | 建物にかかる税額 | 土地にかかる税額 | 税額の合計 |
3,000万円 | 約7.6万円 | 約2.0万円 | 約9.6万円 |
4,000万円 | 約10.1万円 | 約2.6万円 | 約12.7万円 |
5,000万円 | 約12.6万円 | 約3.3万円 | 約15.9万円 |
6,000万円 | 約15.1万円 | 約3.9万円 | 約19.0万円 |
7,000万円 | 約17.6万円 | 約4.6万円 | 約22.2万円 |
上記の結果より、新築住宅の購入後1年目にかかる固定資産税は約10万円からが目安といえます。ただし、年数や特例が適用される面積の範囲などによって固定資産税の金額は変動する点に注意が必要です。
新築住宅にかかる固定資産税の計算方法
ここでは、前述した固定資産税の目安を算出するときに用いた計算方法を紹介します。
順番に見ていきましょう。
建物にかかる固定資産税額は、以下の計算式で表されます。
税額 = 課税標準額 × 標準税率(1.4%)
建物の場合は課税標準額が『固定資産税評価額』と等しくなります。新築時の固定資産税評価額は、請負工事金額の50〜60%が目安です。
固定資産税評価額は3年ごとに見直しが行われ、次第に減少していきます。
例えば、新築住宅に2,000万円の建築費がかかっている場合は、「2,000万円×60%×1.4%=16.8万円」の固定資産税が目安です。
ただし、新築の場合は軽減措置が適用されるため、実際に支払う金額は少なくなります。
※参考:地方税制度|固定資産税|総務省
土地にかかる固定資産税額は、以下の計算式で表されます。
税額 = 課税標準額 × 標準税率(1.4%)
土地で軽減措置が適用されない場合は、課税標準額が『固定資産税評価額』と等しくなります。土地の固定資産税評価額は購入価格や時価の70%程度が目安です。
例えば、2,000万円の土地を購入した場合は、「2,000万円×70%×1.4%=19.6万円」の固定資産税が目安です。ただし、住宅用に土地を購入した場合は軽減措置が適用され、課税標準額が減額された上で標準税率が掛けられるので、実際に支払う金額は少なくなります。
※参考:地方税制度|固定資産税|総務省
計算方法で解説したとおり、新築住宅や住宅用の土地を購入する場合は固定資産税の軽減措置が適用されます。
上記について、順番に見ていきましょう。
建物にかかる固定資産税の軽減措置は以下のとおりです。
軽減措置の対象 | 適用期間 | 軽減割合 |
新築住宅 | 3年度分 ※特定の住宅は5年度分 | 2分の1 |
長期優良住宅の新築住宅 | 5年度分 ※特定の住宅は7年度分 | 2分の1 |
※参考:地方税制度|固定資産税|総務省
軽減措置の対象となるためには、以下の条件を満たすことが必要です。
軽減措置が適用される場合、居住部分の床面積が120㎡までの建物にかかる税額は以下の計算式で表されます。
税額 = 課税標準額(固定資産税評価額 × 軽減措置(1/6)) × 標準税率(1.4%)
固定資産税額が大きく減少するので、住宅を購入するにあたっては大きなメリットとなる軽減措置と言えます。
多くの自治体では申請は不要となっておりますが、必要なケースというのもあります。申請が必要な自治体の場合は、新築住宅を購入した年の翌年1月31日までに所在する自治体に申請しましょう。
※参考:地方税制度|固定資産税|総務省
ここでは、新築住宅の固定資産税がいくらかかるのか、条件を設定して実際にシミュレーションしていきます。なお、建物と土地の購入価格の割合は前述したとおり6:4とします。
【条件】
まずは、新築住宅の固定資産税評価額(概算)を以下のとおり算出します。
建物の固定資産税評価額 = 2,400万円 × 60% = 1,440万円
土地の固定資産税評価額 = 1,600万円 × 70% = 1,120万円
次に、建物と土地に減額措置(特例)が適用された場合の課税標準額を算出します。なお、それぞれ面積によって適用範囲と割合が異なるため、それぞれを分けて以下のとおり計算します。
【建物の課税標準額】
【土地の課税標準額】
※小数点は切り捨て
建物の課税標準額は概算で864万円、土地は290万円となりました。これらに標準税率である「1.4%」を掛けて、それぞれの固定資産税額を以下のとおり算出します。
建物の固定資産税額(※) = 864万円 × 1.4% = 約12万円
土地の固定資産税額(※) = 290万円 × 1.4% = 約4万円
固定資産税の合計 = 約12万円 + 約4万円 = 約16万円
※小数点は切り捨て
上記の結果から、建物2,400万円、土地1,600万円の新築住宅にかかる固定資産税額は約16万円になることがわかりました。
ただし、建物にかかる固定資産税の軽減措置の適用は3年目までであること、固定資産税評価額は3年ごとに見直されることを踏まえると、税額は年々変化することを知っておきましょう。
※参考:2023年度 フラット35利用者調査|住宅金融支援機構
新築住宅の固定資産税について、以下の注意点があります。
順番に見ていきましょう。
新築住宅の軽減措置を受けるためには、各自治体などに自分で申請することが必要です。住宅用地の申請にあたっては、住宅用地等申告書を提出します。申告する内容は以下のとおりです。
申請期限は購入した翌年の1月31日までですので、早めに申請することをおすすめします。
※参考:「固定資産税の住宅用地等申告書」について|東京都主税局
建物にかかる固定資産税は、年々減額していきます。なぜなら、時間の経過とともに建物が劣化していくことを考慮した『経年減点補正』によって、固定資産税評価額が減少していくからです。
木造と比較して非木造のほうが経年減点補正率の変化が小さい傾向にあります。経年減点補正率の下限である20%に到達するまでに木造の場合は27年が必要であるのに対して、非木造の場合は45年が必要です。つまり、木造のほうが固定資産税額の減額が大きくなりやすいといえます。
※参考:経年減価補正率表|法務局
建物の固定資産税の軽減措置には、新築から3〜7年の適用期間があります。適用期間が終了したら支払う税額が増加することに注意が必要です。
建物の固定資産税に対する措置の軽減割合は2分の1です。経年劣化による税額の減少を考慮しても、軽減措置適用が終了すると支払額は約2倍になるため、事前に準備しましょう。
※参考:地方税制度|固定資産税|総務省
最後に、新築の固定資産税に関するよくある質問を紹介します。
疑問の解消にお役立てください。
固定資産税の軽減措置が適用される期限は、建物と土地とで異なります。
建物の場合、軽減措置の対象は2026年3月31日(令和8年)までに新築されている住宅であることが条件です。また、新たに課税される年度から3〜7年間は適用されます。
一方、土地の場合は軽減措置の適用期限は特に定められていません。
※参考:地方税制度|固定資産税|総務省
固定資産税の軽減措置は申請が不要の自治体も数多くありますが、必要な場合もあります。軽減措置の申請を忘れてしまった場合では、速やかに市区町村に連絡して相談してみましょう。
軽減措置の申請を忘れるなどして未申請となってしまったとしても、その期間が短ければ申請を受け付けてもらえる場合があり、払いすぎた固定資産税が還付されるケースもあります。
家屋調査とは、新築後1〜3ヶ月を目安として調査員が建物内へ立ち入って行われる、固定資産税評価額を算出するための調査です。確認される項目は以下のとおりです。
所有者や代理人の立ち合いが必要になる点に注意が必要です。
正当な理由があれば調査を拒否することも可能です。ただし、その場合は書面のみで固定資産税評価が行われ、高めに税額が算出されるおそれがあります。
※参考:固定資産税関係Q&A(家屋の評価に関すること)|銚子市
シミュレーションで紹介したとおり、土地・建物合わせて4,000万円の新築住宅を購入する場合、軽減措置が適用されれば、固定資産税は16万円程度になるでしょう。
軽減措置を適用するために申請が不要な自治体は少なくありません。ただし、申請が必要な自治体も存在するため、事前に確認しておくことをおすすめします。
新築住宅の固定資産税額は、軽減措置を適用することで半分以下に抑えられることがあるため、ぜひ適用を受けましょう。
この記事の情報は2024年11月時点のものです。最新の情報は、お住まいの市区町村にお問い合わせください。
記事監修
宅地建物取引士/2級ファイナンシャル・プランニング技能士
最新のトレンドや法改正を踏まえ、円滑な住宅売買に向けた仕組み作りと前線でのサポートを実践する。「ちんたいグランプリ(旧・不動産甲子園)」 2020年度・2022年度特別賞。
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