この記事では、認定低炭素住宅の認定基準、申請手続きについて詳しく解説します。
認定低炭素住宅は、二酸化炭素の排出を抑え、エネルギー効率の高い住まいとして注目されています。認定を受けるには特定の基準を満たす必要があります。また、建築コストの増加や申請手続きの手間といった課題もあります。
さらに、税制優遇や住宅ローンの金利優遇、光熱費の削減といったメリット、認定取得の流れについても解説します。環境に優しい住まいを検討している方や、補助金・優遇措置を活用したい方は、ぜひ参考にしてください。
【この記事でわかること】
認定を受けるには、断熱性能を高めることや、再生可能エネルギーを利用する設備を導入する必要があります。
認定低炭素住宅になると、税制優遇や補助金を受けられるメリットがあるため、新築だけでなくリフォームを考えている人にとっても選択肢の一つとなるでしょう。
以下で低炭素住宅について解説します。
順番に見ていきましょう。
住宅が認定低炭素住宅かどうかを確認するには、自治体の認定状況や必要な書類の有無を確かめることが重要です。
まず、認定低炭素住宅は市街化区域内にあることが条件です。自治体の都市計画図を確認し、該当エリアにあるかチェックしましょう。市街化調整区域にある住宅は、認定低炭素住宅の対象にはなりません。次に、「認定書」や「認定低炭素住宅建築証明書」が交付されているか確認します。これらの書類の有無については、不動産業者や現在の住宅所有者に問い合わせることで確認できます。
また、新築の場合も自治体へ申請し、基準を満たす必要があります。購入・建築・リフォームを検討する際は、認定の条件を理解し、税制優遇や補助金の対象になるか確認するとよいでしょう。
認定低炭素住宅は、「エコまち法」に基づき行政の認定を受けた住宅で、住宅ローン減税や固定資産税の軽減などの優遇措置があります。
一方、低炭素住宅は法的な定義がなく、省エネ性能の高い住宅全般を指しますが、認定を受けていない場合は税制優遇の対象外となることがあります。
なお、認定低炭素住宅は、市街化区域内に限られるため、認定を希望する場合は要件を確認し、手続きを進めることが重要です。
認定低炭素住宅の認定を受けるには、省エネルギー性能や資金計画などの基準を満たす必要があります。
認定低炭素住宅は大きく以下の3つの要件を満たす必要があります。
認定基準 | 概要 |
---|---|
省エネルギー性能 | 省エネ基準を超える性能を持ち、低炭素化のための対策を講じていること |
環境に配慮した都市づくりへの適合 | 低炭素なまちづくりの方針に合っていること |
資金計画 | 建築や維持管理において適切な資金計画があること |
このうち、省エネルギー性能に関する基準はさらに「定量的評価項目」と「選択的項目」に分かれています。
以下で解説します。
上記2点を見ていきましょう。
認定低炭素住宅と認定されるには、以下の3つの条件をすべて満たす必要があります。
以下が認定低炭素住宅の定量的項目です。
認定基準 | 概要 |
---|---|
一次エネルギー消費量 | 省エネ法の基準より20%以上削減していること |
再生可能エネルギー設備 | 太陽光発電や薪ストーブなど、再生可能エネルギーを利用する設備を導入していること |
戸建て住宅のエネルギー効率 | 省エネ効果による削減量と再生可能エネルギー設備で生み出されるエネルギー量の合計が、基準一次エネルギー消費量の50%以上であること |
以下が認定低炭素住宅の選択的項目です。
認定基準 | 概要 |
---|---|
節水設備の設置 | 節水型トイレや水栓、食器洗い機の設置 |
雨水・井戸水の利用 | 雨水・井戸水・雑排水の再利用設備の導入 |
エネルギーマネジメント | HEMSやBEMSなど、エネルギー使用量の見える化設備を設置 |
再生可能エネルギーと蓄電池 | 太陽光発電などの設備に加え、定置型蓄電池を導入 |
ヒートアイランド対策 | 屋上緑化、敷地の緑化、反射率の高い屋根材の採用など |
住宅の劣化防止 | 長寿命化のための対策を施す |
木造住宅の採用 | 木造建築であること |
環境負荷の低い建材の使用 | 高炉セメントやフライアッシュセメントを主要部分に採用 |
EVとの連携設備 | 電気自動車と建物間で電力供給が可能な設備を設置 |
たとえば、木造住宅であれば自動的に条件「木造住宅の採用」をクリアするため、追加設備の導入負担を抑えられます。
また、選択項目を満たしていなくても、行政庁が特に低炭素化に資する建築物と認めた場合は、認定を受けることが可能です。
以下で認定低炭素住宅のメリットを紹介します。
順番に見ていきましょう。
住宅の登記時にかかる登録免許税は、一般住宅よりも低い税率が適用され、費用を抑えられます。
また、10年以上の住宅ローンを組むと「住宅ローン減税」の控除対象借入限度額が拡充され、より高い減税効果が期待できます。
さらに、住宅ローンを利用しない場合でも「認定住宅新築等特別税額控除」により所得税の軽減が可能です。
なお、2024年以降、住宅ローン減税の適用対象が省エネ住宅に限定されることが決まっています。認定低炭素住宅はこの基準を満たすため、制度改正後も引き続き住宅ローン控除を受けられます。
たとえば、「フラット35」Sの金利Aプランでは、借入から10年間、通常より0.25%低い金利が適用されます。わずかな差に見えますが、長期間の返済にわたって適用されるため、総支払額を大幅に抑えられる可能性があります。
借入額や返済期間によって異なりますが、結果として数十万円から数百万円の節約につながることもあります。
特に、断熱材の性能向上や高性能な窓の採用により、室内の温度が外気の影響を受けにくくなります。その結果、冬は暖かく夏は涼しい快適な住環境を保ちやすく、冷暖房のコストを抑えられるでしょう。
さらに、認定基準の選択項目の一つである「節水対策」を取り入れれば、水の使用量を減らし、水道代の節約も期待できます。
認定低炭素住宅には、低炭素化に必要な設備が容積率の計算対象から除外されるという特例措置があります。そのため、一般住宅と同じ条件でも、実際にはより広い住空間を確保しやすくなります。
容積率の緩和により、より開放的な間取りを設計できるほか、収納スペースの確保なども容易になります。
認定低炭素住宅を建てる際、補助金を利用できる可能性があります。特に、省エネ設備の導入には初期費用がかかるため、補助金を活用すれば負担を軽減できるでしょう。
代表的な補助金には、「こどもエコすまい支援事業」や「地域型住宅グリーン化事業」があります。どちらも国の制度ですが、併用はできないため、どの補助金が適用されるか事前に確認することが重要です。「地域型住宅グリーン化事業」では、1戸あたり最大110万円の補助が受けられます。
ただし、補助金は基準を満たせば必ずもらえるわけではなく、家族構成や建物の仕様、施工会社によって適用条件が異なります。申請前に最新の制度内容を確認し、適用可能な補助金を活用しましょう。
以下で認定低炭素住宅に認定されるまでの流れを4STEPで解説します。
順番に見ていきましょう。
この段階で、審査機関に相談することも可能です。認定を受けるには各種条件をクリアする必要があるため、事前の相談をしておくとスムーズに進められるでしょう。
審査を担当する機関には、JAIC(J建築検査センター)やBCJ(日本建築センター)などがあります。これらの機関と契約を結び、審査の手続きを進める流れです。
認定をスムーズに取得するためにも、設計の段階から審査機関とやり取りを行い、必要な書類や条件をしっかり確認しておきましょう。
認定低炭素住宅の基準を満たしているかを確認する重要な工程です。技術的審査では、設計内容が省エネ性能や低炭素化の要件を満たしているかがチェックされます。
書類に不備があると審査がスムーズに進まないため、事前にしっかり確認しておくことが大切です。
必要に応じて審査機関からの質問に対応しながら、認定基準を満たしているかを確認していく流れです。
審査は書類のチェックに加え、技術的な観点からの検証も行われます。指摘事項があれば修正や追加書類の提出が求められるため、適宜対応する必要があります。
適合書は認定低炭素住宅として認められるための重要な書類となるため、提出前に内容をしっかり確認しておきましょう。
申請が受理されると、行政庁による認定審査が行われます。ここでも書類の確認や基準適合のチェックが実施され、問題がなければ正式な認定通知書が交付される流れです。
認定通知書を受け取れば、認定低炭素住宅として正式に認められます。
認定低炭素住宅の注意点は以下の通りです。
順番に解説します。
資源エネルギー庁のデータによると、2021年時点での太陽光発電システムの導入費用は平均28.0万円/kWでした。家庭用の太陽光パネルは4〜6kW程度の容量が一般的なため、100万円以上のコストがかかるケースも少なくありません。
さらに、認定低炭素住宅の申請費用や、専門業者にサポートを依頼する費用も発生します。
※参考:
認定低炭素住宅の建築では、着工前に認定申請を完了させる必要があるため、通常の住宅よりも時間がかかります。
設計段階から審査を受ける必要があり、その分の手続き期間が長くなるのです。具体的には、まず審査機関に技術的審査を依頼し、基準を満たしているかを確認します。その後、所管の行政庁へ認定申請を提出し、審査が完了するまで一定の期間が必要です。
市街化区域とは、都市計画法に基づき、10年以内に市街化を優先的に進める地域として指定されたエリアです。
認定低炭素住宅がこの区域に限定されるのは、CO2排出量の多い都市部での低炭素化を目的とした制度であるためです。
住宅の建設予定地が市街化区域かどうかを確認するには、各自治体が公開している都市計画図を活用するとよいでしょう。
認定低炭素住宅の認定を受けた場合、建築途中で設備や仕様を変更することは基本的にできません。
これは、着工前に計画・申請書を提出し、審査を受けることが制度上の要件となっているためです。
もし計画を変更する場合、再度技術的審査を受け、所管行政庁へ認定申請をし直す必要があります。この手続きには時間や手間がかかるため、現実的には途中での変更は難しいでしょう。なお、認定低炭素住宅から通常の住宅に変更することは可能です。しかし、その場合は補助金や住宅ローン減税などの優遇措置を受けられなくなります。
以下で低炭素住宅でよくある質問を解説します。
順番に見ていきましょう。
認定低炭素住宅と長期優良住宅は、どちらも高性能な住宅を推奨する制度です。しかし、認定基準に違いがあります。
長期優良住宅は、省エネ性能に加え「耐震性」「劣化対策」「バリアフリー性」など、幅広い基準を満たす必要があります。一方、認定低炭素住宅はCO2削減に特化しており、基準が比較的シンプルです。そのため、長期優良住宅の方が認定基準は厳しく、取得のハードルが高くなります。
ただし、税制優遇や補助金制度には大きな違いがないため、建築コストを抑えつつ省エネ効果を重視するなら、認定低炭素住宅の方が適しているといえるでしょう。
認定低炭素住宅との違いとして、ZEHの方が審査基準が緩やかであり、受け取れる補助金の額が多い傾向がある点が挙げられます。
認定低炭素住宅はエネルギー消費の削減が目的なのに対し、ZEHは消費エネルギーのすべてを自家発電で補う点が特徴です。
省エネを重視するなら認定低炭素住宅、エネルギー収支ゼロを目指すならZEHが適しているでしょう。
認定を得るには一定の基準を満たす必要がありますが、再生可能エネルギーの利用設備を導入すれば認定を受けることが可能です。
再生可能エネルギーといえば太陽光発電が一般的ですが、風力発電や水力発電なども対象となります。太陽光発電が難しい場合は、他の方法で基準を満たせるか検討するとよいでしょう。
また、両方の認定を受けても補助金を重複して受け取れない場合があるため、どの補助金を選ぶかを事前に確認しておくことが大切です。
一方で、住宅ローン控除の優遇期間が延びるなどのメリットもあります。審査の負担と得られるメリットを比較しながら、慎重に検討しましょう。
税制優遇や住宅ローンの金利優遇、補助金の対象となるメリットがありますが、申請手続きや建築コストの増加、仕様変更の難しさなどの注意点もあります。
認定を受けるには、市街化区域内であることや、再生可能エネルギー設備の導入などの条件を満たす必要があります。また、長期優良住宅やZEHとの違いを理解し、最適な制度を選ぶことも重要です。
制度を賢く活用し、環境にも家計にもやさしい住宅づくりを目指しましょう。
記事監修
宅地建物取引士/2級ファイナンシャル・プランニング技能士
東京・神奈川の複数センターでセンター長を歴任後、営業推進部長や埼玉・名古屋エリアの立ち上げにも寄与。2022年からは契約管理部門にて、オープンハウス全国の契約書作成や引き渡し業務を統括中。
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