女性の社会進出による晩婚化と、出産年齢の高まり、核家族化によるご近所同士のつながりの希薄化によって、自治体による産後ケアの必要性は年々増しています。
出産直後の女性は、慣れない子育てやホルモンバランスの崩れ、夜泣きによる不規則な生活、職場復帰への不安などで、情緒不安定になりがちです。特に首都圏にお住まいの方は、実家が地方にあることも多く、両親にも頼れない場合が多く見られます。
そこで、育児不安を解消し、お母様の休養と体力回復を目的として設立されたのが、「産後ケアセンター」です。充実した産後ケア体制を整えることは、児童虐待や少子化問題の解消にもつながります。
2008年3月に全国で初めてオープンした「産後ケアセンター桜新町」では、産後4ヶ月未満の母子を対象に、宿泊または日帰りで、母体や乳児のケア、育児指導や相談などのサービスを提供しています。センターには助産師が24時間常駐しているため、赤ちゃんを預けてゆっくりお風呂に入りったり、ゆっくりお昼寝をして疲れをとったり、また、赤ちゃんの発育、発達チェックをしてもらったり、沐浴の仕方を教わったりすることも可能です。
赤ちゃんを連れてのお出かけは荷物も多く憂鬱になりがちですが、センターには、赤ちゃん用の紙おむつ、おしりふき、ベビーソープ、調乳用品、お母様用には、室内着、母乳パッド、シャンプー、リンス、バスタオル、育児雑誌などが完備されており、宿泊の場合でも、最小限の荷物で済みます。
世田谷区では、センターを利用できるのは、「産後4カ月未満のお母様とお子様で、育児不安や体調不良があり、ご家族などから支援を受けられない方」としていて、世田谷区内で出産される方の1割以上が利用しているとのことです。
料金は、1泊2日で64,000円(食事付き)、日帰りプランは1日2食+夜食付きで21,100円ですが、世田谷区民であれば、利用軽減が適用され、約1割の料金で利用可能です。
一般利用 | 世田谷区民 | ||
---|---|---|---|
宿泊プラン | 日帰りプラン | 宿泊プラン | 日帰りプラン |
65,800円(1泊2日) | 21,100円 | 6,400円(1泊2日) | 2,060円 |
現在、産後ケアセンターがあるのは、世田谷区、葛飾区、荒川区、港区、中野区、文京区、中央区の7区のみですが、産後ケアセンター以外にも、産後ケアに力を入れている自治体の例をいくつかご紹介します。
港区では、東京23区で初めて保健所に助産師(子育てコーディネーター)を配置し、相談窓口を設けました。産後ケアセンターを利用できるのが産後数ヶ月に限定されるのに対して、この制度では、妊娠・出産・育児期におけるワンストップな支援サービスを提供します。また、家庭支援センターなどの関係機関と共にご自宅を訪問しての相談を承ることも可能です。
産後ケアとしては、年に一度助産師が自宅を訪問し、母体ケアやベビーケアについての訪問指導を行う他、生後4ヶ月未満の母子に対して、母体ケアや交流・学びの場となる場所を提供し、月に一度の交流会も開催されます。毎月開催される母親学級や両親学級では、栄養士や保健師、助産師、歯科医師などの専門家による講義を受けることもできます。港区では、これらのサービスを、すべて無料でご利用いただけます。
また、練馬区では、出生・転入された1歳未満のお子様のいるご家庭に、「子育てスタート応援券」を発行しています。応援券には、「家事応援券」、「助産師ケア券」、「育児応援券」、「育児応援券」の4種類があり、応援券との交換で、お子様の一時預り、食事の支度、洗濯、食材・生活必需品の買い物などの日常的な家事の支援、簡単な乳房ケア、育児相談などのサービスをご利用いただけます。
担当職員は、ヘルパーや助産師の資格を持っている人や、既定のカリキュラムを終了した地域のボランティアなので、安心です。
このように、23区の中でも、産後ケア体制は区によってかなりばらつきがあるようです。マイホームをお探しの方は、産後ケア体制の充実度も、エリア選択の1つの基準にしてみてもいいかもしれません。
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