
持ち家なしの老後はどうなる?賃貸で暮らすメリット・デメリットも解説
公開日:2025年04月10日
この記事では、持ち家なしの老後について解説します。
持ち家がない人の老後には、家賃の支払いが続くことや契約更新のリスクなど、住まいに関する不安が伴います。特に、年金収入だけで生活する場合、家賃の負担が家計に大きく影響を与えるため、慎重な資金計画が必要です。
この記事では、持ち家なしの人の老後はどうなるのかや、賃貸で暮らすメリット・デメリットについて解説します。
【この記事でわかること】
- 持ち家がない人の老後はどうなるのか
- 持ち家なしの人が老後に賃貸で暮らすメリット
- 持ち家なしの人が老後に賃貸で暮らすデメリット
- 持ち家なしの人が老後に安定した生活を送るポイント
- 持ち家なしの人が老後に備えて資金計画を立てる手順
持ち家がない人の老後はどうなるのか
持ち家がない人の老後はどうなるのかを以下4点から解説します。
- 老後に持ち家がない人の選択肢
- 老後にかかる生活費の平均目安
- 老後にかかる生活費以外の支出
老後に持ち家がない人の選択肢
老後に持ち家がない人の選択肢は以下のとおりです。
- 賃貸暮らし
- 移住
- シニア住宅への入居
- マンスリーマンションやホテル暮らし
- シェアハウス
- 家族に住まわせてもらう
老後に持ち家がない人にもさまざまな選択肢があります。
賃貸暮らしを続ければ、ライフスタイルの変化に応じて住み替えがしやすく、自分に合った環境を選び続けることが可能です。
地方や海外へ移住することで、生活コストを抑えながら、新しい環境で充実した暮らしを楽しむこともできます。
シニア住宅に入居すれば、安心のサポートを受けながら快適に暮らせますし、マンスリーマンションやホテルを活用すれば、身軽で自由なライフスタイルを実現できます。
シェアハウスなら、他の人との交流を楽しみながら、コストを抑えつつ安心して暮らせるでしょう。
もちろん、家族のもとで暮らすことができれば、支え合いながら温かい環境で過ごせるメリットもあります。
老後にかかる生活費の平均目安
老後にかかる生活費の平均目安は以下のとおりです。
| 費目 | 月額平均支出額(単身世帯) | 月平均支出額(夫婦世帯) |
|---|---|---|
| 食料 | 4万103円 | 7万2,930円 |
| 住居 | 1万2,564円 | 1万6,827円 |
| 光熱・水道 | 1万4,436円 | 2万2,422円 |
| 家具・家事用品 | 5,923円 | 1万477円 |
| 被服および履物 | 3,241円 | 5,159円 |
| 保健医療 | 7,981円 | 1万6,879円 |
| 交通・通信 | 1万5,086円 | 3万729円 |
| 教養・娯楽 | 1万5,277円 | 2万4,690円 |
| その他の支出消費 | 3万821円 | 5万839円 |
| 合計 | 14万5,430円 | 25万959円 |
参考:
総務省統計局|家計調査報告 〔 家計収支編 〕 2023年(令和5年)平均結果の概要(p.19)
持ち家がない人は、上記の生活費に加えて月5〜10万円の家賃が別途必要になるため、単身世帯で約15〜20万円、夫婦世帯で約30〜35万円の生活費がかかる可能性があります。
特に都市部で暮らす場合、家計の負担はより大きくなるため注意しましょう。
老後にかかる生活費以外の支出
老後にかかる生活費以外の支出は以下のとおりです。
- 税金や社会保険料
- 冠婚葬祭費
- 家電や家具の買い替え費用
- 旅行やレジャー費
- 家族の支援費用
老後の生活では、基本的な生活費以外にもさまざまな支出が発生します。税金や社会保険料は年金受給後も支払いが続き、特に健康保険料や介護保険料は経済的な負担が大きくなりがちです。
また、冠婚葬祭費も考慮すべき支出の一つです。結婚式や葬儀への参列費用として発生し、特に葬儀費用は高額になる傾向があるため、事前の準備が重要となります。
さらに、家電や家具の買い替え費用も無視できません。冷蔵庫や洗濯機、エアコンといった耐久消費財の寿命を考慮した資金計画が求められます。
老後の楽しみとなる旅行やレジャーにも費用がかかりますが、計画以上に支出が増えることもあります。
また、家族の支援費用として、子どもや孫への金銭的援助が発生するケースもあり、自身の老後資金とのバランスが大切です。
持ち家なしの人が老後に賃貸で暮らすメリット
持ち家なしの人が老後に賃貸で暮らすメリットは主に以下の4点です。
- 住み替えや引っ越しの自由度が高い
- 維持管理の手間やコストがかからない
- 税金や修繕費などが抑えられる
- 相続トラブルの心配がない
住み替えや引っ越しの自由度が高い
持ち家がないことで、ライフスタイルや健康状態に応じて住む場所を柔軟に変えられます。
老後の生活環境を快適に保つためにも、必要に応じた住み替えができることは魅力的です。
身体機能が低下した際には、バリアフリー対応の賃貸やエレベーター付き物件へ移ることで、安全に暮らせます。また、医療機関の近くに引っ越せば、通院の負担を減らすことも可能です。
さらに、現在の気候や生活環境が合わない場合でも、より快適な地域へ住み替えができます。寒暖差の少ない場所や治安の良いエリアへの移住も選択肢になるでしょう。
維持管理の手間やコストがかからない
持ち家を所有すると、建物の修繕や庭の手入れ、設備のメンテナンスなど、様々な管理業務を自分で行う必要が出てきます。
しかし、賃貸物件であればこうした作業はオーナーや管理会社が対応するため、負担を大きく減らせます。
修繕費やリフォーム費用も持ち家の場合は自己負担となりますが、賃貸なら基本的にオーナーが負担するため、大きな出費を抑えることが可能です。
また、時間や体力を使わずに済むため、無理なく快適な生活を続けられるでしょう。
税金や修繕費などが抑えられる
持ち家がないことで、固定資産税や住宅ローンの返済、修繕費といった長期的なコストを負担する必要がありません。
これにより、老後の資金計画を立てやすくなります。
賃貸物件なら、大規模な修繕費やリフォーム代はオーナー負担のため、自分でまとまった資金を用意する必要はほとんどありません。
また、家賃の変動や収入の変化に応じて住み替えができるため、生活費のコントロールがしやすくなるという利点もあります。
さらに、必要に応じて家賃の安い物件に移ることで支出を抑えたり、利便性の高いエリアへ引っ越して生活の質を高めたりすることも可能です。
相続トラブルの心配がない
持ち家を所有していると、相続の際に親族間でトラブルが発生することがあります。特に、不動産は現金と違い分割しにくいため、遺産分配で揉めるケースも少なくありません。
持ち家がない場合、相続財産の大部分が現金や預貯金となるため、相続人同士で公平に分けやすくなります。
また、売却や維持管理の手間も発生しないため、残された家族の負担を軽減できるでしょう。
さらに、相続税の計算や名義変更などの手続きが不要となり、スムーズに資産を引き継ぐことが可能です。
持ち家なしの人が老後に賃貸で暮らすデメリット
持ち家なしの人が老後に賃貸で暮らすデメリットは以下の3点です。
- 高齢になると入居を断られるケースがある
- 家賃を支払い続けなければならない
- 生活状況の変化に応じた間取り変更ができない
高齢になると入居を断られるケースがある
高齢者が賃貸物件を探す際、審査で不利になることがあります。特に、年齢や健康状態が理由で契約を断られるケースも少なくありません。
高齢者の入居を敬遠する理由の1つとして、賃貸オーナーが家賃の支払い能力や健康面でのリスクを懸念することが挙げられます。また、単身での入居の場合、万が一の際の対応を心配されることもあります。
賃貸では改装やリフォームに制約があるため、自分に合った住環境を整えにくいという課題もあります。バリアフリー化が必要な場合でも、物件の制約により自由に対応できないことがあります。
家賃を支払い続けなければならない
持ち家の場合、住宅ローンを完済すれば基本的な居住費は固定資産税や維持費のみになります。しかし、賃貸物件に住んでいる場合は、家賃を一生払い続ける必要があります。
特に、退職後に収入が減少すると、毎月の家賃負担が大きな経済的プレッシャーになることがあります。年金収入だけでは家賃をまかないきれないケースもあり、住み続けるための工夫が求められます。
家賃相場が高いエリアや、賃料が上昇しやすい地域では、将来的に支払いが厳しくなる可能性も考えられます。
生活状況の変化に応じた間取り変更ができない
賃貸物件では、持ち家と違い、自分のライフスタイルに合わせた間取りの変更が難しいケースがあります。
特に、家族構成や健康状態が変化したときに自由にリフォームできない点がデメリットとなります。
たとえば、高齢になりバリアフリー化が必要になっても、勝手に手すりを設置したり、段差をなくしたりすることはできません。
また、部屋数を増やしたり、間仕切りを取り払ったりすることも困難なため、ライフステージに合わせた住環境の調整がしにくくなります。
持ち家なしの人が老後に安定した生活を送るポイント
ここでは、持ち家なしの人が老後に安定した生活を送るポイントを見ていきましょう。
- 早い段階で家計の見直しを図る
- 少しでも長く働いて老後に備える
- 家賃補助や公的支援制度を活用する
- 高齢者向け賃貸住宅の利用を検討する
- 資産運用や投資を検討する
早い段階で家計の見直しを図る
老後の資金を確保するには、収入を増やすだけでなく、支出を抑えることも大切です。早めに家計を見直せば、将来的な負担を軽減できるでしょう。
まず、毎月の支出を記録し、無駄な出費を把握することが重要です。固定費の削減などの小さな見直しが積み重なれば、大きな節約に繋がります。
また、日々の買い物ではクーポンやセールを賢く活用したり、光熱費を節約したり、自炊の回数を増やしたりすることも有効な手段です。
少しでも長く働いて老後に備える
老後の生活を安定させるためには、できるだけ長く働くことが有効です。
収入を確保する期間を延ばすことで、貯蓄を増やし、年金受給開始を遅らせることで受給額を増やすことも可能になります。
定年後も働ける環境を整えるために、資格を取得したり、新しいスキルを身につけたりするのも1つの方法です。特に、リモートワークやフリーランスの仕事など、自分のペースで続けられる働き方を考えてみるのもよいでしょう。
また、パートやアルバイトなど、負担の少ない形で働き続けることも選択肢の1つです。
家賃補助や公的支援制度を活用する
老後の住まいの負担を軽減するためには、家賃補助や公的支援制度を活用することが重要です。これらの制度を利用することで、経済的な負担を減らし、安定した生活を送りやすくなります。
自治体によっては、低所得者や高齢者を対象とした家賃補助制度を設けている場合があります。
これにより、毎月の家賃負担を抑えながら、安心して暮らせる住環境を確保しやすくなります。
また、住宅改修の助成制度を利用すれば、バリアフリー化など必要なリフォームを低コストで行うことも可能です。
高齢者向け賃貸住宅の利用を検討する
高齢になると、賃貸の契約が難しくなることがあります。そのため、高齢者向けの賃貸住宅を選択肢に入れることも大切です。
一般的な賃貸物件では、年齢や健康状態を理由に入居を断られるケースもありますが、高齢者向けの住宅であれば心配が少なくなります。
見守りサービスやバリアフリー設備が整っている物件も多く、安全面でも安心できるでしょう。
また、介護が必要になった場合に備え、サポート体制のある住宅を選ぶのも1つの方法です。
資産運用や投資を検討する
老後の生活を安定させるためには、貯蓄だけでなく資産運用や投資を取り入れることも有効です。
早めに検討することで、将来の経済的な不安を軽減できるでしょう。
リスクを抑えながら資産を増やすためには、分散投資を意識することが大切です。株式や投資信託、債券などを組み合わせ、自分に合った運用方法を選びましょう。
また、初心者でも始めやすいNISAやiDeCoなどの制度を活用すれば、税制優遇を受けながら資産を増やせます。無理のない範囲で少額から始めるのも1つの方法です。
持ち家なしの人が老後に備えて資金計画を立てる手順
ここでは、持ち家なしの人が老後に備えて資金計画と建てる手順を紹介します。
- STEP1.老後の支出を計算する
- STEP2.年金やその他の収入を把握する
- STEP3.必要な貯金額を算出する
STEP1.老後の支出を計算する
まず、老後に必要な生活費を把握することが大切です。持ち家がない場合、賃貸住宅の家賃が継続的な支出となるため、特に注意する必要があります。
支出の内訳として、以下のような項目を考慮しましょう。
- 住居費:家賃、管理費、更新料など
- 生活費:食費、水道光熱費、通信費など
- 医療費:健康診断、持病の治療費、介護費用など
- 娯楽・交際費:趣味、旅行、交際費など
- その他:税金、保険料、家具・家電の買い替え費用など
総務省の家計調査によると、単身高齢者の平均生活費は約15万円とされていますが、住居費がかかる場合はさらに増加する可能性があります。自分のライフスタイルに合わせた現実的な支出額を試算しましょう。
STEP2.年金やその他の収入を把握する
老後の収入として最も基本となるのは公的年金ですが、他の収入源についても確認が必要です。主な収入項目は以下のとおりです。
- 公的年金:国民年金や厚生年金の受給額を確認し、シミュレーションを行う
- 企業年金・個人年金:確定拠出年金(iDeCo)や個人年金保険など
- 資産運用:株式投資、投資信託、不動産投資など
- 労働収入:シニア向けのアルバイトや在宅ワークの可能性
- その他:家族からの援助や副業
公的年金だけでは生活費を補いきれない場合、働き続ける選択肢や資産運用の活用を検討する必要があります。日本年金機構の『ねんきん定期便』や年金シミュレーターを活用し、受給予定額を確認しましょう。
STEP3.必要な貯金額を算出する
STEP1で試算した「老後の支出」と、STEP2で把握した「年金や収入」の差額を埋めるために、必要な貯蓄額を計算します。たとえば、以下のような計算が可能です。
- (年間支出) ー (年間収入) × 老後の期間 = 必要な貯蓄額
仮に毎月の生活費が25万円、年金収入が15万円の場合、月10万円の不足が発生します。これを30年間(65歳〜95歳)補うとすると、以下の計算結果の3,600万円が必要になります。
- 10万円 × 12ヶ月 × 30年 = 3,600万円
さらに、インフレや突発的な支出に備えて、余裕を持った貯蓄を計画することが重要です。
持ち家がない人の老後に関するよくある質問
最後に、持ち家がない人の老後に関するよくある質問を紹介します。
- 年金で家賃を払うのは現実的といえる?
- 老後に家賃が払えないとどうなる?
- 持ち家がない人の老後はずっと賃貸でも大丈夫?
年金で家賃を払うのは現実的といえる?
年金で家賃を支払うこと自体は可能ですが、生活費を貯蓄や資産運用、家族からの支援などで賄える場合でなければ、安定した暮らしを維持するのは難しくなります。
公的年金の受給額は、国民年金のみなら月約6.5万円、厚生年金がある場合でも月15万円前後が一般的です。
対して、都市部の家賃相場は7万〜10万円程度となるため、年金の大半が家賃で消えてしまう可能性があります。
老後に家賃が払えないとどうなる?
老後に家賃を滞納すると、最悪の場合は契約の解除や退去を求められ、住む場所を失う可能性もあります。
また、滞納の履歴が残ると新しい賃貸契約が難しくなり、選択肢が限られてしまうことも考えられます。
家賃の支払いがきついと感じたら、早めに引っ越しなどの対策を考えましょう。
持ち家がない人の老後はずっと賃貸でも大丈夫?
持ち家がなくても老後を賃貸で過ごすことは可能ですが、家賃の支払い継続や契約更新のリスクも存在します。
シニア向けの賃貸物件を選び、年金に見合った家賃の計画を立て、保証人の準備をすることで安心して暮らせます。
持ち家がない人は老後の暮らしを具体的にイメージすることが重要
この記事では、持ち家がない人の老後の暮らしについて解説しました
老後に賃貸で暮らす場合、漠然とした不安を抱えるのではなく、具体的な生活設計を考えることが必要です。
賃貸を選ぶ場合のメリットとデメリットを理解し、自分にとって最適な住まいを見つけましょう。
賃貸住宅には、住み替えの柔軟性や維持費の削減などのメリットの一方で、家賃の支払いが続くことや契約更新のリスクなどのデメリットもあります。
これらを踏まえ、老後の収入に見合った家賃の物件を選ぶことが求められます。
また、高齢者向けの賃貸住宅や、住み続けやすい地域を選ぶことも大切です。バリアフリー設計の物件や、医療機関・スーパーが近いエリアを検討することで、老後の生活が快適になります。
さまざまな点を考慮しながら、老後の家選びを行いましょう。

記事監修
加藤 健吾
宅地建物取引士/公認不動産コンサルティングマスター
首都圏10センター以上でのセンター長の他、マーケティング長・総務部長としての経歴も有する。複雑な不動産の資産価値に関し、幅広い知識と経験をもとにアドバイスを提供。
- 2025年3月時点の内容です。















