マイホームを買い換える場合、前の家を売却して得た利益は「譲渡所得」となり、「譲渡所得税」という税金が課せられます。そこで利用できるのが「3,000万円控除」という特例です。3,000万円控除を適用すると、マイホーム買い換え時にかかる譲渡所得税の金額を抑えることができます。しかし、なかなか聞き慣れない制度で「そもそも適用対象になるのか」「新居購入時の住宅ローン控除と併用できるのか」などの疑問を持たれている方も多いでしょう。そこで本記事では、マイホーム買い換え時の3,000万円控除について、詳しく解説していきます。
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記事監修
宅地建物取引士/2級ファイナンシャル・プランニング技能士
最新のトレンドや法改正を踏まえ、円滑な住宅売買に向けた仕組み作りと前線でのサポートを実践する。「ちんたいグランプリ(旧・不動産甲子園)」 2020年度・2022年度特別賞。
3,000万円控除とは、自分が住んでいた家を売却したときの譲渡所得から最大3,000万円が控除され、「譲渡所得税」を軽減できる制度です。
正式には、「居住用財産を売却した場合の3,000万円控除の特例」といいます。
簡単な例を挙げると、マイホームを売って5,000万円の売却益が出たら、5,000万円-3,000万円=2,000万円に対してのみ「譲渡所得税」が課せられることになります。
つまり、「マイホームの売却にかかる税金を抑えられる」制度です。
3,000万円控除については、売却の際に不動産会社からアドバイスをもらえることがほとんどです。
しかし、自分でもしっかりと適用条件や申請方法を理解しておくことで、書類漏れや申請手続きの不備などのリスクを回避できるでしょう。
3,000万円控除が適用される大前提は、売却する不動産が所有者の「居住用財産」であることです。
つまり、「所有者が住むために使われている、もしくは使われていた建物や土地」が対象となります。
そのうえで、原則以下の1〜6すべての条件に当てはまる必要があります。
<3,000万円控除の適用条件>
つまり、自分が住んでいた家と敷地に対して他の特例を受けておらず、住んでいた時期から3年以内(厳密には住まなくなった日から3年目の12月31日まで)に他人に売却することで3,000万円控除を受けられます。
3,000万円控除を受けるには条件があります。すべてに該当していなければ、控除を受けることができません。売却を検討している建物や土地に適用されるかを、事前に確認しておくと安心です。
マイホームの買い換えでは、「前の家が売れるまで他の人に賃貸していた」「前に住んでいた家屋を取り壊し、土地だけ売却した」など、さまざまなケースが考えられます。
そこで、3,000万円控除が適用されるその他のケースについて、以下の5つに分けて詳しく解説していきます。
それぞれ詳しくみていきましょう。
家屋を取り壊したあとに残った敷地のみを譲渡した場合でも、条件を満たせば3,000万円控除の対象となります。
この場合、以下3つの条件すべてに当てはまることが必要です。
<控除の対象となる条件>
家を取り壊した後の土地を、売却までに誰かに貸し出してしまうと、適用の対象外となるため注意しましょう。
親が亡くなったあとに、相続で引き継いだ家を売却する際は、「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」という別の特例が適用されます。
特例の名称は異なりますが、本記事で解説している「3,000万円控除」と同様、売却した際の譲渡所得から最大3,000万円が控除される制度です。
主な適用条件は以下の通りです。
<控除の対象となる条件>
相続開始後、他人へ譲渡するまでに誰かに賃貸していたり、誰かが住んでいたりすると適用対象外となるため注意しましょう。
詳しくは、国税庁HP「
」をご確認ください。
1つの家屋の中に居住用部分と店舗用部分がある住宅を売却すると、3,000万円控除が適用されます。
ただし、売却益のうち、自分が住んでいた部分の割合のみが控除の対象となる点に注意が必要です。
詳しくは国税庁HP「
」をご確認ください。
誰かと居住用不動産を共有していた場合は、共有者の所有権の持分に応じて売却益の計算を行います。
さらに、3,000万円控除は共有者それぞれに適用されるため、確定申告も各々で行う必要があります。
<例:夫の持分3/5、妻の持分2/5の不動産を売却し、5,000万円の売却益を得た場合>
夫の売却益=5,000万円×3/5=3,000万円
夫に課税される譲渡所得=3,000万円(売却益)-3,000万円(控除額)=0円
妻の売却益=5,000万円×2/5=2,000万円
妻に課税される譲渡所得=2,000万円(売却益)-2,000万円(控除額)=0円
つまり、3,000万円控除により、夫・妻ともに譲渡所得税はかかりません。
住まなくなった家屋を譲渡までに人に貸していた場合でも、住まなくなってから3年目の12月31日以内に譲渡するなど、適用条件を満たしていれば3,000万円控除を受けることができます。
ただし、家を取り壊したあとの敷地を売却する場合、譲渡までに敷地を駐車場などとして貸し出していると、3,000万円控除の適用は受けられません。
賃貸していた場合や、土地だけだったとしても、所有者の居住用財産であれば3,000万円控除が適用されるケースがあります。所有している建物や土地が該当するか、不安であれば専門家に確認するのがおすすめです。
3,000万円控除の適用を受けるためには、不動産を売却した翌年の2月16日〜3月15日の間に、一定書類を添えて確定申告する必要があります。
確定申告書や必要書類の提出は、マイナンバーカードとスマートフォンを用意すれば、e-Tax(電子申告)で対応が可能です。
e-Taxでは、のちほど解説する、3,000万円控除の申請時に必要な「譲渡所得の内訳書」の作成もできるため、ぜひ活用しましょう。
譲渡所得の申告に関して、詳しくは国税庁HP「
」をご確認ください。
3,000万円控除を受けるためには、翌年までに確定申告が必要です。電子申告も可能なので、国税庁HPを確認しながら作成しましょう。
3,000万円控除の特例を受けるために必要な書類は、以下の通りです。
<マイホームを売却したとき>(居住用財産を売却した場合の3,000万円控除の特例)
<相続で引き継いだ家を売却したとき>(被相続人の居住用財産を売却した場合の3,000万円控除の特例)
詳細な確定申告書の作成方法や、添付書類を確認したい方は、国税庁HP「
」をご確認ください。
申請には必要な書類が複数あります。年によって変更される可能性があるので、詳細を知りたい場合は国税庁HPを確認するか、直接電話で問い合わせをしましょう。
住宅ローン控除との併用はできないものの、3,000万円控除には併用できる減税制度もあります。
その1つとして「10年超所有軽減税率の特例」が挙げられます。
「10年超所有軽減税率の特例」とは、10年以上所有していた居住用財産を売却した場合、譲渡所得税の「税率」が軽減されて、さらに税金を抑えられる制度です。
通常、10年を超えて所有していた不動産を売却した際の譲渡所得に係る税率は15%ですが、この特例を併用すると、以下のように税率が軽減されます。
課税対象となる譲渡所得金額=A | 税額 |
---|---|
6,000万円以下 | A×10% |
6,000万円超 | (A-6,000万円)×15%+600万円 |
10年以上所有していたマイホームを売却し、買い換える際は、ぜひご検討ください。
詳しくは、国税庁HP「
」をご確認ください。
10年以上所有していた居住用財産であれば、3,000万円控除と併用できる減税制度が利用できます。長い時間お世話になったマイホームに感謝して、積極的に制度を利用しましょう。
3,000万円控除を受けるのには条件があります。
少々複雑な制度ですが、どういった場合に受けられるかをしっかりと確認しましょう。
一時的に空き家となっていても、その理由が病気の転地療法や入院などで、後日戻ってくることが確実な場合は居住用として3,000万円の特例が受けられます。
しかし、実際に居住しなくなってから3年目の年末を経過してしまうと、特例は受けられなくなります。
居住用財産と認められるには、実態として生活している状態でなければなりません。
居住用の財産とみなされる空き家と土地を兄弟で相続した場合、兄弟それぞれが2分の1ずつなど、持分で相続した場合はそれぞれ3,000万円控除の特例を受けられます。
ただし、被相続人の居住用の家屋と敷地、両方の権利を取得することが必要です。
例えば、兄は土地、弟が家屋というような場合は特例を受けることができません。
マイホームの買い換えにおいて、3,000万円控除と住宅ローン控除の併用はできないため、注意しましょう。
住宅ローン控除とは、住宅ローンを借り入れて家を購入した場合に、一定の条件を満たした場合、その年末における住宅ローン残高の0.7%が、13年間に渡って所得税(一部住民税)から控除される制度です。
※2022年より前に住宅ローン控除が適用された方はローン残高の1%が10年間に渡って控除されます。
住宅ローン控除の詳細は、厚生労働省の
をご確認ください。
マイホームの買い換えにおいて、3,000万円控除と住宅ローン控除は併用できないため、どちらを利用するか選ぶ必要があります。
そこで問題となるのは、「3,000万円控除と住宅ローン控除、どちらがお得なのか?」ということです。
しかし、この答えは前の家の売却益や住宅ローンの借入額などによって変わります。
また、マイホームの買い換えでは、他にも以下のような特例を利用できるケースもあります。(3,000万円控除との併用は不可)
どの特例が適用可能で、最も適しているのかは、不動産会社やハウスメーカーの担当者・FPなどの専門家に相談してみましょう。
3,000万円控除と住宅ローン控除は、残念ながら併用できません。マイホームの買い換えでの金銭的負担を抑えるためにも、不動産会社や専門家に相談し、自分の状況に見合った控除を選ぶようにしましょう。
3,000万円控除を受けた場合、どれだけ税金を抑えられるかのシミュレーションをしてみましょう。
例えば、20年前に取得費2,000万円で購入した住宅を5,000万円で売却し、譲渡費用200万円がかかったとします。
自宅を売却した場合の譲渡所得は「譲渡所得=譲渡価格-(取得費+譲渡費用)」で求められ、そこから最高3,000万円を控除した額が課税対象になります。
3,000万円控除は自宅の所有期間にかかわらず受けることができますが、譲渡所得税の税率は所有期間が5年以下か5年超によって以下のように異なります。
所得の種類 | 所有期間 | 所得税率 | 住民税率 | 復興特別所得税 | 合計税率 |
---|---|---|---|---|---|
長期譲渡所得 | 5年超 | 15% | 5% | 0.315% | 20.315% |
短期譲渡所得 | 5年以下 | 30% | 9% | 0.63% | 39.63% |
実際に譲渡取得を求めてみると、以下の通りとなります。
譲渡所得=譲渡価格-(取得費+譲渡費用)
=5,000万円ー(2,000万円+200万円)=2,800万円
所有期間が20年なので、2,800万円×20.315%=568万8,200円が納税額となります。
3,000万円特別控除を適用した場合、譲渡所得から3,000万円がマイナスされるため、568万の税金が控除されます。
3,000万円特別控除によって、多額の税金控除を受けられることが分かりました。できるだけ費用を抑えたい方は、適用条件を満たしているか確認し、検討してみると良いでしょう。
3,000万円控除に関するよくある質問についてまとめました。
Q1. 前の家の売却益が3,000万円以下だった場合は、確定申告しなくていいの?売却益が3,000万円以下であっても、確定申告は必要です。
3,000万円に満たない場合に自動的に非課税になるわけではなく、こちらから申告しなければ3,000万円控除は適用されません。
Q2. 前の家の土地と建物の所有者名義が異なる場合は、3,000万円控除を受けられる?土地と建物の所有者が異なる場合でも、条件を満たせば3,000万円控除を受けられます。
例としては、土地の所有者が夫、建物の所有者が妻であるケースなどがあります。
<適用を受けるための要件>
被相続人(亡くなった人)が、亡くなる直前まで老人ホームで過ごしていた場合でも、条件を満たせば、被相続人が所有していた家を売却する際に3,000万円控除を受けられます。
具体的には、被相続人が要介護・要支援認定を受けて老人福祉法に規定される老人ホームに入居しており、所有していた家屋が他人に賃貸されていないことなどが挙げられます。
詳細の適用条件は、国税庁HP「
被相続人が老人ホーム等に入所していた場合の被相続人居住用家屋
」をご確認ください。
3,000万円控除の適用には必ず確定申告が必要なので、売却益が3,000万円以下であっても申告するようにしましょう。その他イレギュラーな例でも、3,000円控除が適用される可能性があります。不明な点は信頼できる不動産会社やハウスメーカーに相談しましょう。
3,000万円控除が適用されれば、住宅を売却する際の譲渡所得税を抑えられるため、マイホームの売却を検討している方に知っておいていただきたい制度です。
とはいえ、本記事の内容だけではまだ疑問点が残るという方もいらっしゃるでしょう。
そこで活用していただきたいのが、オープンハウスの公式サイトです。
オープンハウスにはプロフェッショナルな視点と豊富な不動産の知識を持つスタッフが在籍し、不動産の買取や住まいに関するご相談を受け付けています。
会員登録は30秒で完了しますので、ぜひご登録ください。
3,000万円控除は、マイホームの売却時の譲渡所得から最大3,000万円が控除される制度です。10年間所有していた場合は、さらに軽減税率の特例との併用も可能となります。
3,000万円控除の適用を受けるためには、翌年2月16日〜3月15日までの確定申告で、必要書類とともに申請する必要があります。売却益が3,000万円に満たない場合も申告が必要です。
売却と同時に、新居の購入を考えている方もいるでしょう。しかし、新居の購入に住宅ローンを利用した場合の住宅ローン控除と、前の家の売却における3,000万円控除の併用はできません。不動産会社やハウスメーカーに相談してどちらを利用するべきかを検討し、計画を立てましょう。
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3,000万円控除は、マイホームを売る際にとても便利な制度です。その後、新しくマイホームを購入するのであれば、金銭的負担を減らすことが可能なので、売却前に理解を深めておくと良いでしょう。