家の新築や増改築を考えている方にとって、建築確認申請について知っておくことはとても重要です。建築時、建築基準法に基づく「建築確認申請」が必要になることは知っていても、不要になる場合があることはあまり知られていません。そこで今回は、建築確認申請が不要になる条件について詳しく解説していきます。あわせて建築確認申請の流れや費用、よくある質問などについてもご紹介していきますので、ぜひ参考にしてください。
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記事監修
宅地建物取引士/公認不動産コンサルティングマスター
首都圏10センター以上でのセンター長の他、マーケティング長・総務部長としての経歴も有する。複雑な不動産の資産価値に関し、幅広い知識と経験をもとにアドバイスを提供。
建築確認申請とは、建築物が建築基準法や自治体の条例に合致しているか否かを判断するために必要となる申請のことです。
建築物の安全性を確保したり、周囲への影響を少なくしたりすることが目的となります。
そのため、申請内容には建ぺい率や容積率、建物の耐久性など住宅性能や安全性に関する多くの確認事項があり、かなり専門的な内容です。
なお、建築確認申請をする場所は、自治体、または国土交通大臣や知事から指定された民間の指定確認検査機関となります。
新築の場合以外で建築確認申請が必要になるのは、10㎡を超える規模の増改築や大規模修繕と模様替え、特殊建築物の場合などが挙げられます。
ただし、防火・準防火地域での増改築は10㎡以下でも建築確認申請が必要ですので注意してください。
建築確認申請後は、間取りや仕様の変更ができなくなるので注意しましょう。
もし申請後に変更が必要な場合は、計画変更の申請が必要です。
なお、建築確認申請をせずに着工すると違法建築物となり、是正措置に従わないと罰金刑や懲役刑が課されるケースもありますので十分に注意しましょう。
建築物を建てる際は基本的に建築確認申請が必要ですが、一定の条件を満たしていれば不要になる場合があります。
建築確認申請が不要になる7つの条件について解説します。
建築基準法の「建築物」に該当しない小屋や倉庫を建てる場合、建築確認申請は不要です。
建築物とは、「土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの」を指します。
そのため、「土地に定着」していないと判断されれば、小屋や倉庫などは、建築確認申請は不要となります。
国土交通省は、小規模な倉庫について、外部から荷物の出し入れを行うことができ、かつ、内部に人が立ち入らないものは、「建築物」に該当せず、建築確認申請が不要であると示しています。
ただし、長期にわたり設置される、移動が容易ではない、一定の規模以上であるなどの場合には「土地に定着」する工作物と判断され、建築確認申請が必要となる可能性があるので注意しましょう。
文化財に指定された建築物を改修する場合、建築確認申請は不要です。
文化財に指定される建築物は、歴史的・文化的価値が高く管理に専門的な知識と技術が求められることが多く、一般的な建築物とは取り扱いが異なるからです。
なお、文化財に指定された建築物とは、文化財保護法の対象建築物のことです。
具体的には、建築基準法第3条に明記されている以下の4つの条件に当てはまる建築物をいいます。
これらの建築物は、都道府県知事や市町村長など、地方公共団体により指定文化財の保護や管理が行われているのが一般的です。
修理や改築などの工事についても、文化財の価値を損なわないように専門的な審査が行われています。
また、文化財に指定された建築物以外に文化的価値が高いと判断された建築物も建築確認申請は不要です。
都市計画区域外に建てられた4号建築物も建築確認申請が不要です。
4号建築物とは、以下の3つの条件を満たす建築物のことを指します。
上記の条件を満たす4号建築物は、建築基準法の規制から一定程度緩和されています。
その上で、4号建築物が都市計画区域外に建てられた場合は、建築・増改築ともに建築確認申請が不要です。
建築物を特殊建築物に用途変更する際、床面積が200㎡以下の場合は建築確認申請が不要です。
なお、特殊建築物とは不特定多数の人が利用する建築物や消防法で定められた防火対象物、または周辺への影響が大きい建築物のことを指します。
具体的には、以下のような人の出入りが多い建築物です。
ただし、床面積が200㎡以下でも次の2つの条件を満たしていることが必要です。
これらの条件が満たされない場合は、たとえ床面積が200㎡以下であっても建築確認申請が必要です。
また、事務所や戸建住宅など特殊建築物以外の用途に変更する場合は、床面積の広さにかかわらず建築確認の申請は不要です。
防火地域、または準防火地域ではなく床面積10㎡以下の増築・改築・移転の場合、建築確認申請は不要です。
これは、建築確認申請を省略しても安全性や周囲の環境への影響が大きくないと判断されているためで、建築基準法第6条4の2に規定されています。
ただし、床面積10㎡以下の建築物であっても、その一部分でも防火地域、または準防火地域に該当すれば建築確認申請が必要になるので注意しましょう。
ちなみに、防火地域とは駅前や繁華街、または建物が密集しているエリアなどのことです。
また、防火地域の周辺が準防火地域と呼ばれます。
防火地域や準防火地域は、火災などを防止して人の命を守るために建築制限が設けられているのです。
また、建築確認申請が不要であっても土地利用の規制や景観条例など自治体による条例で規制されている場合があります。
そのため、たとえ床面積が10㎡以下でも増築・改築・移転を行う際は、所在地の関係法令や条例を確認し、適切な手続きを行いましょう。
一部の仮設建築物も、建築確認申請が不要です。
一部の仮設建築物とは、以下の建物を指します。
「一部」とあるように、これらの条件に適合する仮設建築物においてのみ、建築確認申請が不要です。
すべての仮設建築物に対して申請が不要となるわけではないので注意しましょう。
床面積を減らしたりする減築を行う場合も、原則として建築確認申請は不要です。
ただし、減築を行うことで、他にしなければいけない申請が発生する可能性があります。
例えば、3階建ての建物の3階を減築する場合は、減築にともない屋根の大幅な修繕が発生するため、大規模な修繕・模様替えの建築確認申請が必要となります。
また、40㎡を減築し、20㎡を増築した場合も、減築面積と増築面積の差引きはできないため、20㎡の増築に対して建築確認申請が必要です。
減築するだけであれば問題ありませんが、代わりに増築箇所がある場合は気をつけましょう。
小屋や倉庫、小規模な増築などでは、建設確認申請が不要となります。しかし、条件に該当しなかった場合は違法となってしまうので、心配な場合は専門家に相談しましょう。
建築物の工事に必要となる申請は、着工前の「建築確認申請」と完成後の「完了検査申請」、建築物の構造によって必要となる「中間検査申請」の3つです。
ここでは、建築物の工事完了までに必要となる建築確認申請からの流れと申請に必要な期間についてご紹介します。
建築確認申請から完了検査申請までのおおまかな流れは、下記の通りです。
着工前の「建築確認申請」は、自治体もしくは指定確認検査機関へ申し込みます。
この申し込みは、建築主ではなく建築会社や施工業者が委任代行するのが一般的です。
建築確認申請では、建築物が都市計画法、建築基準法、消防法などの法律に反していないかが検査されます。
検査の主な内容は、以下の通りです。
建築確認申請の確認完了後に自治体から交付される建築確認済証は、工事着工前の段階での図面や計画が、建築基準法に違反していないことの証明となります。
また、建築確認済証は金融機関からの融資や不動産登記、建築物の増改築や売却する際にも必要になるので大切に保管しておきましょう。
建築確認済証が交付されると工事の着工ができるようになります。
ただし、3階建以上の建築物など自治体が指定した一部の建築物については「中間検査」が必要です。
中間検査の目的は、構造の検査をし、建築物の完成後に外から目視で確認できなくなる箇所を確認することです。
検査が完了すると、「中間検査合格証」が発行されます。
建築物の完成後、完了検査を申請します。
これは、「建築物が建築確認申請通りに建てられているか」の検査です。
問題がない場合は、建築検査機関、または特定行政庁から「検査済証」が発行されます。
検査済証は、建築物を売却したり増改築したりする場合の建築確認申請に必要となるので、大切に保管しておきましょう。
なお、完了検査の申請は、建築工事終了後の4日以内に行う必要があります。
その後、7日以内に完了検査を受けなければなりません。
建築確認申請の審査に必要な期間は、通常約1週間です。
ただし、確認書類に不備があった場合、申請期間は延びる可能性があります。
また、中間検査が必要な建築物の場合は、その分の検査期間も必要です。
完了検査に必要な期間も、通常1週間ほどとされていますが、不備があったときは再検査が必要となるため、数週間かかる場合もあります。
建築確認申請には、時間がかかってしまいます。安全性を保証するものなので、省くことはできません。建築の流れを知り、必要時間を踏まえてスケジュールを組みましょう。
建築確認申請に必要な費用は、建築物の床面積や自治体によって異なるため注意しましょう。
ここでは、東京都を例にして建築確認申請に必要な費用の相場を解説していきます。
あわせて、建築確認申請に必要となる書類もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
建築確認申請に必要となる費用には、以下の3つがあります。
建築物の床面積ごとに、それぞれの手数料をご紹介します。
<30㎡以内のもの>
計画通知手数料(建築物) | 5,600円 |
---|---|
特定工程工事終了通知手数料 | 9,900円 |
工事完了通知手数料(特定工程に係るもの) | 9,900円 |
<30㎡を超え100㎡以内のもの>
計画通知手数料(建築物) | 9,400円 |
---|---|
特定工程工事終了通知手数料 | 1万1,000円 |
工事完了通知手数料(特定工程に係るもの) | 1万1,000円 |
<100㎡を超え200㎡以内のもの>
計画通知手数料(建築物) | 1万4,000円 |
---|---|
特定工程工事終了通知手数料 | 1万5,000円 |
工事完了通知手数料(特定工程に係るもの) | 1万5,000円 |
<200㎡を超え500㎡以内のもの>
計画通知手数料(建築物) | 1万9,000円 |
---|---|
特定工程工事終了通知手数料 | 2万1,000円 |
工事完了通知手数料(特定工程に係るもの) | 2万1,000円 |
<500㎡を超え1,000㎡以内のもの>
計画通知手数料(建築物) | 3万5,000円 |
---|---|
特定工程工事終了通知手数料 | 3万4,000円 |
工事完了通知手数料(特定工程に係るもの) | 3万6,000円 |
<1,000㎡を超え2,000㎡以内のもの>
計画通知手数料(建築物) | 4万9,000円 |
---|---|
特定工程工事終了通知手数料 | 4万6,000円 |
工事完了通知手数料(特定工程に係るもの) | 4万9,000円 |
<2,000㎡を超え1万㎡以内のもの>
計画通知手数料(建築物) | 14万6,000円 |
---|---|
特定工程工事終了通知手数料 | 10万4,000円 |
工事完了通知手数料(特定工程に係るもの) | 11万5,000円 |
<50,000㎡以内のもの>
計画通知手数料(建築物) | 24万9,000円 |
---|---|
特定工程工事終了通知手数料 | 16万7,000円 |
工事完了通知手数料(特定工程に係るもの) | 18万6,000円 |
<50,000㎡を超えるもの>
計画通知手数料(建築物) | 47万4,000円 |
---|---|
特定工程工事終了通知手数料 | 34万1,000円 |
工事完了通知手数料(特定工程に係るもの) | 38万3,000円 |
以上のように、建築申請に必要となる費用は建築物の床面積によって大きく異なります。
また、建築主は建築会社や施工業者に委任費用を支払う場合が多いため、実際に必要な費用はその分も加算されたものです。
建築確認申請には、主に以下のような書類が必要です。
書類 | 内容 |
---|---|
確認申請書 | 設計主や建築物の住所、用途地域や建ぺい率が記載されている |
委任状 | 建築会社や施工事務所などが建築主の代理で建築確認申請をするために必要な書類 |
公図 | 土地の区画や配置を表す地図であり、法務局で入手可能 |
建築計画概要書 | 確認申請書と同じ内容だが、一般に公開されており、不動産の調査の際に閲覧できる書類 |
工事届 | 建築主や工事の種別、主要用途などが記載された書類 |
案内図 | 建築物の所在が記載された地図 |
配置図 | 敷地の形状と敷地内の建物の配置がわかる図面 |
求積図 | 敷地と建物の面積を算出するための図面 |
平面図 | 仕様などを書き込んだ建物の平面図 |
シックハウス計算表 | シックハウスの原因となるホルムアルデヒドの使用面積や室内を換気する回数などを記載した書類 |
建築確認申請にかかる費用や必要な書類などの準備は、初心者にとっては難しく感じるでしょう。
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建築確認申請に必要な経費は、建築物や自治体によって変わります。書類も多く、複雑に感じるかもしれません。しかし、専門家に相談しつつ行うことで、不安も解消されます。分からない場合は、建築会社や施工業者に確認してみましょう。
ここでは、建築確認申請についてのよくある質問と、その回答をご紹介していきます。
建築確認申請が必要なのに申請しない場合、建築主や建築会社、施工業者にとって以下のような不都合が発生するリスクがあります。
建築確認申請を行わずに建築物を建設すると、違法建築とみなされるため、注意が必要です。
違法建築物は、建築基準法や関連法令に適合していないため、安全性や環境への影響が懸念されます。
そのため、周囲の住民から苦情が出る可能性があり、トラブルに発展するリスクも高くなってしまうでしょう。
違法建築が発覚すると、地方公共団体から是正措置命令や建築物の撤去命令が出されることがあります。
その場合、建物の改築や撤去が必要となり、大きな費用負担となる可能性があることはリスクです。
建築確認申請を怠った場合、建築主や建築会社、施工業者に対して刑事罰が適用される可能性があります。
その場合、懲役または罰金が科されるリスクが高いです。
違法建築扱いの物件は、金融機関からの融資が受けられない可能性が高いです。
そのため、不動産の売買や賃貸にも影響が出ることがあり、資産価値が低下するリスクがあります。
違法建築が明らかになった場合、建築会社や施工業者の信用が失墜して評判が悪化することがあります。
これにより、今後のビジネスや信用取引に悪影響を与えるリスクが高まるでしょう。
さまざまなリスクを避け、建築確認申請を問題なく進めるためにも、安心して代行委任することのできる建築会社や施工業者に相談することが大切です。
これにより、不要なリスクやトラブルを避けることができます。
結論からいえば、カーポートを建てる際には建築確認申請が必要な場合と不要な場合があります。
たとえば、カーポートの基礎が地面に固定されず、床面積が10㎡以下なら建築確認申請は不要です。
しかし、カーポートの床面積が10㎡を超えており、柱が地面に打ち込まれたり、コンクリートで固定されたりして基礎が地面に固定されている場合は、建築確認申請が必要となります。
また、カーポートを建てる場所が「防火地域・準防火地域」「用途地域」であったり、建築基準法以外の法令や条例があったりする場合も建築確認申請が必要です。
なお、「用途地域」とは都市計画法に基づいて定められた住宅地域や商業地域などを指します。
カーポートが用途地域に適合していない場合は、建築確認申請が必要となるので注意しましょう。
申請を怠ると、違法建築と判断されてしまい、撤去命令や罰金を科せられることもあります。申請漏れなどのリスクを防ぐためにも、信頼出来る建築会社や施工業者に委託しましょう。また、カーポートも申請が必要となる場合があります。建てる際には、床面積などを確認してください。
建築確認申請が不要になるケースや申請の流れについてご紹介しましたが、難しく感じる方も多いでしょう。
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家などを建てる際には建築基準法や自治体の条例に合致しているかを確かめるため、「建築確認申請」が必要です。ただし、一定の条件を満たしている建物に対しては、建築確認申請が免除されるケースがあります。
建築確認申請にかかる費用は、建物の床面積によって大きく異なります。さらに、申請は建築会社や施工会社に依頼するケースが多く、その委任費用がかかることにも注意が必要です。
建築確認申請が必要な場合において申請を怠ると、違法建築物とみなされるだけでなく、撤去や罰則の対象になる可能性があります。また、違法建築物に対し、金融機関から融資が受けられない可能性もあるため注意が必要です。トラブルを避けるためにも、信頼できる建築会社や施工会社を選びましょう。
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