この記事では、中古住宅の購入でもフラット35を利用できるかについて解説します。
この記事では、中古住宅におけるフラット35の利用可否について解説します。
『フラット35』とは、住宅金融支援機構が提供している住宅ローン商品です。多くの住宅ローンでは団信への加入が必須条件とされていますが、フラット35では団信に入らなくても融資を受けられる点が大きな特徴です。
この記事では、中古住宅の購入でもフラット35を利用できるかについて解説します。物件検査の流れや審査が不要な中古住宅の特徴もお伝えするので、フラット35を利用しての中古住宅購入を検討している人は、ぜひこの記事を参考にしてください。
【この記事でわかること】
中古住宅を購入する場合においても、フラット35を利用できます。実際に2023年度にフラット35を利用した人のうち、27.4%の人が中古戸建てや中古マンションなどの中古住宅を選んでいました。
ただし、著しく築年数が経過している物件の場合、フラット35を利用できない場合があります。ここでは、フラット35を利用できる中古住宅の築年数について見ていきましょう。
※参考:2023年度 フラット35利用者調査丨住宅金融支援機構
中古住宅でフラット35を利用する際、築年数による利用制限は設けられていません。技術基準をクリアしていれば、問題なくフラット35を利用できるでしょう。
ただし、昭和56年(1981年)5月31日以前に建てられた物件については、『新耐震基準』を満たしている必要があります。新耐震基準は昭和56年の6月1日に施行されており、それより前に建てられた物件の多くが新耐震基準を満たしていません。
基準を満たしていることを証明する適合証明書がない場合、審査に通らずフラット35を利用できないおそれがあります。
※参考1:築年数が古いものでも利用可能ですか。丨フラット35
※参考2:新・旧・現行 『耐震基準』とは丨一般社団法人 リノベーション協議会
中古住宅の購入でフラット35を利用するには、住宅金融支援機構が定める技術基準を満たし適合証明書を取得することが必要です。
一戸建て住宅とマンションでは、以下のようにフラット35の技術基準が異なります。
項目 | 一戸建て住宅 など | マンション |
接道 | 原則として一般の道に2m以上接すること | |
住宅の規模 | 70㎡以上(共同住宅の場合は30㎡以上)であること | 30㎡以上であること |
住宅の規模 | 原則として、居住室が2つ以上あり、便所および浴室を設置していること(居住室は家具などで仕切られる場合でも可能) | |
併用住宅の床面積 | 併用住宅の場合、住宅部分の床面積が全体の1/2以上であること | |
戸建て型式など | 木造住宅は一戸建て、または連続建てに限る | |
住宅の構造 | 耐火構造、準耐火構造または耐久性基準に適合していること | |
住宅の耐震性 | 昭和56年6月1日以降に建築確認がされていること(昭和56年5月31日以前の場合は耐震評価基準を満たしていること) | |
劣化状況 | 土台や床組などに腐朽や蟻害がないことなど | 外壁や柱などに鉄筋の露出がないことなど |
維持管理基準 | ー | 管理規約が定められており、長期修繕計画は計画期間が20年以上であること |
※参考:【フラット35】 中古住宅の技術基準の概要丨フラット35
※一戸建て住宅などには、連続建て住宅や重ね建て住宅および地上2階以下の共同建ての住宅を含む
※ここでは、マンションは地上3階以上の共同建ての住宅を指す
接道や住宅の規格、床面積や構造などについては共通の基準が設けられています。
マンションの技術基準には維持管理が含まれており、管理規約や長期修繕計画などが必要です。
将来的に資産価値が低いと考えられる中古マンションの場合、フラット35を利用できる可能性は低いでしょう。
一方、戸建て住宅ではマンションのような維持管理基準が設けられていません。劣化状況に関する項目も異なるため、購入したい住宅のタイプに合った内容を把握しておきましょう。
フラット35では住宅の耐震基準が重視されており、購入する際は基準を満たしているか確認することが大切です。
ここでは、上記2つのケースについて解説します。
中古の共同住宅の場合、耐震評価基準については以下4点が定められています。
マンション構造は、ラーメン構造と壁式構造の2種類に分けられます。
ラーメン構造は垂直方向の柱と水平方向の梁で長方形の空間を作る構造であり、柱が室内に出っ張っているのが特徴です。一方、壁式構造は床と天井、4枚の壁で空間を構成する構造で、凸凹がないフラットな形状をしています。
2つの構造が建物の上部と下部で混在している場合、フラット35は利用できないので注意してください。ただし、壁式構造は自重が重く高層階に不向きであるため、6階建て以上のマンションであればラーメン構造が採用されています。
マンションなどの共同住宅におけるセットバックとは、建物の上部を下部よりも後退させることです。セットバック部分が建物の長さの1/3を超えている場合、もしくは壁式構造の場合に1/2を超えている場合、フラット35は利用できません。
また、ピロティとは柱だけで構成された壁がない空間です。壁がない空間の上に2階以上の部分を建築するため、耐震性にすぐれているとはいえません。
近年、耐震性が高い共同住宅も増えていますが、ピロティが偏在しているとフラット35は利用できないので注意してください。
一戸建てや連続建て、重ね建て住宅などの共同住宅以外については、以下の耐震評価基準が設けられています。
古民家など築年数が経過している木造中古住宅の場合、基礎の作りがコンクリート造の布基礎ではない場合があります。地面に石を設置してその上から木材を組み立てる玉石基礎や、コンクリート造でも鉄筋が入っていない無筋基礎が採用されている場合があります。
基礎は家を支える最も大切な箇所です。十分な耐震性を満たしていない場合、ローン審査に落ちるだけでなく家の倒壊リスクを高めてしまうでしょう。
中古住宅を選ぶ際は基礎にも着目し、必要に応じて補強工事を実施する必要があります。
審査が不要な中古住宅以外は、フラット35を利用する前に審査を受ける必要があります。フラット35による物件検査の流れは以下のとおりです。
上記2つの流れについて解説します。
書類審査では、適法証明技術者に物件検査の申請を行います。提出する書類は以下のとおりです。
条件 | 提出書類 |
申請者全員 |
|
一戸建て住宅の場合 |
|
マンションの場合 |
|
建築確認日が昭和56年5月31日以前の場合 |
|
住宅構造が木造の住宅に該当する場合 |
|
住宅構造をメーカーに確認した場合 |
|
引受受諾書が発行されたら、調査内容を確認して現地調査日を決定します。
申請書類の準備や現地調査の日取り決定に時間がかかると、ローンの手続きも遅れてしまうため、なるべく早めに取り掛かることをおすすめします。
現地調査では、住宅の現状がフラット35が定めた技術基準を満たしているか、目視で確認します。
物件審査は適合証明検査機関、または適合証明技術者に依頼した後、4営業日〜1週間程度で実施されるケースが一般的です。急いで現地調査をしてほしい事情がある場合は、申請時に伝えておきましょう。
現地調査で不適合となる箇所が見つかった場合も、修繕によって是正されれば適合になります。
物件検査に合格すると、適合証明書と物件検査概要書が合格から1週間程度で交付されます。適合証明書を提出すればフラット35を利用できますが、以下のように有効期限が定められているので、必ず期限内に提出してください。
物件の種類 | 適合証明書の有効期限 | ||
一戸建て・連続建て・重ね建て | 現地調査日から1年間 | ||
マンション | 竣工から5年以内の場合 | 現地調査日から5年間 | |
竣工から5年超の場合 | 現地調査日から3年間 |
また、現地調査の費用は申請者が負担しますが、中古住宅の売主か買主、もしくは第三者でも問題ありません。中古住宅では、4〜6万円が費用相場となっています。
※参考1:中古住宅の物件検査の概要丨フラット35
※参考2:フラット35適合証明業務 中古住宅 手続きのご案内丨一般財団法人 住宅金融普及協会
条件を満たした以下のような中古住宅では、フラット35の審査が不要となります。
上記5つの特徴をそれぞれ解説します。
『中古マンションらくらくフラット35』に該当する建物の場合、新築時に住宅金融支援機構の技術基準を満たして一定の耐久性があるとみなされているため、既にフラット35の適用が認められています。
住宅金融支援機構の『中古マンションらくらくフラット35検索』から、エリアや条件を指定して該当するマンション名を検索できます。
購入を検討しているマンションが表示されていれば、左側のチェックボックスにチェックを入れて、『適合証明省略に関する申出書』を印刷しましょう。申請書を取扱金融機関に提出するだけで済むので、新しく適合証明書を取得する必要がありません。
また、検索結果には最初の5年間、もしくは10年間の金利を0.25%引き下げる『フラット35 S』が適用されるのかも表示されます。
『安心R住宅』とは、中古住宅に関する「不安」や「汚い」などのイメージを払拭し、安心して中古住宅を購入してもらうために国土交通省が開始した制度です。新耐震基準などに適合しているほか、建物調査が行われておりリフォームなどに関する情報もわかりやすくなっています。
認定された住宅は指定のマークが表示されているため、安心して中古住宅を選べます。
購入を予定している中古住宅がR住宅に指定されており、かつ新築時にフラット35を利用している場合は審査が免除となるため、住宅の管理者に確認しておくことがおすすめです。
※参考1:安心R住宅丨国土交通省
※参考2:安心R住宅調査報告書丨国土交通省
※参考3:中古住宅の物件検査の概要丨フラット35
国は、住宅のリフォームを実施したい人が安心して実施できる環境を作るために、住宅リフォーム事業者団体登録制度を設けています。この制度で登録されている事業者がリフォームした住宅の場合、安全な建築基準を満たしているため検査の省略が可能です。
ただし、リフォームを実施した登録事業者が、フラット35の基準を満たしていると確認していることも条件に含まれます。
※参考1:住宅リフォーム事業者団体登録制度丨国土交通省
※参考2:中古住宅の物件検査の概要丨フラット35
築年数が20年以内の中古住宅で長期優良住宅の認定を受けている場合、設計検査の手続きが不要となります。長期優良住宅とは、長期間に渡って快適に暮らせるよう、以下5つの措置がされた住宅のことです。
長期優良住宅であれば、中間現場調査と竣工現場検査・適合証明の手続きだけで適合証明書を取得できます。
※参考1:長期優良住宅とは丨一般社団法人 住宅性能評価・表示協会
※参考2:中古住宅の物件検査の概要丨フラット35
築年数が10年以内で新築時にフラット35の住宅ローンを利用している場合、物件審査の手続きを省略できる可能性があります。建築時に物件検査に合格しているので、建物の品質が保証されているものとみなされるためです。
物件審査の手続きが不要となれば、買主はスムーズに住宅ローンを受けられます。
この記事では、中古住宅の購入にフラット35を利用できるかについて解説しました。
基本的に中古住宅にもフラット35は利用できますが、家の構造や規模、規格などにおいて満たすべき条件が設けられています。また、耐震評価基準が定められており、ローンを利用するためには書類審査や物件検査などを得て基準を満たしているか確認する必要があります。
場合によっては物件検査を省略できるケースがあるため、購入予定の物件が省略対象になっているか確認しておくことがおすすめです。
記事監修
宅地建物取引士
戸建仲介部門一筋で結果を出し続け、2019年より首都圏各地域のエリア統括を歴任。
[メディア出演]サンデー・ジャポン(2014年)首都圏情報ネタドリ!(2020年)、ワールドビジネスサテライト(2020年)
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