一戸建てに住むと、維持費が発生します。維持費のなかには、税金や修繕費などのさまざまな項目が含まれるため、物件の検討段階で計画的に試算しておくことが重要です。一戸建てにかかる維持費・維持費を抑える方法、マンションと一戸建ての違いを解説していきます。
記事監修
宅地建物取引士。中野営業センターのオープニングスタッフとして3年間、営業職として活躍。その後、経営企画部門、経理部門にて株式上場、企業M&A、決算業務、業績開示等に従事。
一戸建ての毎月の維持費は、平均で約3万〜4万円です。
よって、年間では約40万〜50万円必要です。
しかし、居住エリアや建物の構造・耐久性などさまざまな要素によって変動するため、それらの条件を考慮してシミュレーションしましょう。
では、一戸建ての維持費にはどんな費用が含まれるのでしょうか。
内訳と金額の目安について詳しく解説していきます。
一戸建ての維持費には、さまざまな費用が含まれます。
維持費の主な項目と金額の目安を、以下の表にまとめました。
項目 | 概要 | 金額の目安 |
---|---|---|
固定資産税 | 土地や建物を所有する者に課される地方税 | 土地・建物評価額×1.4% |
都市計画税 | 市街化区域内に土地や建物を所有する者に課される地方税 | 土地・建物評価額×0.3% |
火災保険料・地震保険料 | 万が一火災や地震が起こり被害を受けた際に補償を受けるための保険料 | 約2万〜5万円/年 |
住宅のメンテナンス費用 | 住宅の設備・外壁などの劣化・破損を修繕したり安全に居住するために手入れする費用 |
約15万〜150万円/月 (積立の場合)約1万〜2万円/月 |
水道光熱費 | 電気・ガス・水道の使用料 | 約2万〜3万円 |
自治会費 | 居住地域の町内会に支払う加入料 | 約3,000〜5,000円 |
それぞれの項目について、詳しく解説していきます。
固定資産税とは、1月1日時点で土地や建物などの固定資産を所有している者に課される地方税です。
一戸建ての場合、土地と建物に対して別々に固定資産税がかかります。
計算式は、「固定資産税評価額×1.4%(標準税率)」です。
固定資産税は地方税のため、自治体によって異なる場合がある点に注意しましょう。
また、住宅用地や新築住宅に対する固定資産税には、軽減措置が適用される可能性があるため、金額と併せて確認することが重要です。
▼固定資産税の税額と軽減措置土地 | 建物 | |
---|---|---|
税額 |
評価額×1.4% ※税率は市町村により異なる |
評価額×1.4% ※税率は市町村により異なる |
軽減措置 |
<住宅用地の特例> 小規模住宅用地(住宅用地で住宅1戸につき200㎡までの部分) :評価額×1/6 一般住宅用地(小規模住宅用地以外の住宅用地) :評価額×1/3 |
<新築住宅の税額減額> 税額×1/2 ※床面積120㎡分までが限度 ※新たに課税される年度から3年度分 |
軽減措置の適用条件 |
1月1日時点で家屋が建っている土地であること |
住宅の床面積が50〜280㎡以下 |
都市計画税は、1月1日時点で市街化区域内に土地や建物などの固定資産を所有する者に課される地方税で、固定資産税と同時に納付するのが主流です。
固定資産税と同様、土地と建物別々に課税されます。
計算式は、「固定資産税評価額×0.3%(標準税率)」です。
税額と軽減措置に関する詳細は、以下の表を確認しましょう。
▼都市計画税の税額と軽減措置土地 | 建物 | |
---|---|---|
税額 |
評価額×0.3% ※税率は市町村により異なる |
評価額×0.3% ※税率は市町村により異なる |
軽減措置 |
<住宅用地の特例> 小規模住宅用地(住宅用地で住宅1戸につき200㎡までの部分) :評価額×1/3 一般住宅用地(小規模住宅用地以外の住宅用地) :評価額×2/3 |
※軽減措置はなし |
軽減措置の適用条件 |
1月1日時点で家屋が建っている土地であること |
- |
固定資産税との違いは、「土地や建物が市街化区域内に所在するかどうか」です。
市街化区域は、既に市街地を形成している区域や、概ね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域を指します。
所有する土地や建物が市街化区域内に存在するかどうかを判断する基準は、「その土地に用途地域が定められているか」です。
各自治体が公表する都市計画地図で確認できます。
以下は、東京都八王子市の例です。
上記の地図では、色がついている地域に用途地域が定められています。
つまり中心を通る川以外の部分に用途地域が定められているということです。
各地域の都市計画地図は、Web上で「都市計画地図 ○○市(自治体名)」と検索すればアクセスできます。
また、各自治体に該当区域の用途地域を問い合わせることも可能です。
一戸建てに居住する場合、基本的には火災保険・地震保険への加入が必要です。
特に、住宅ローンの融資を受ける際は、火災保険への加入が必須条件となります。
地震保険は任意ですが、火災保険とセットで加入するケースが多いです。
保険料は加入する保険会社やプランによってことなりますが、火災保険に地震保険をプラスして10年一括払いにした場合で、30万〜50万円が目安となります。
1年ごとの契約よりも、5年や10年での長期一括契約のほうが費用を抑えられます。
住宅の設備や外壁は、経年により劣化するため、修理・修繕するための費用が必要です。
比較的大きなメンテナンスが必要となる時期は、築年数10年を目安にしましょう。
以下は各設備や箇所の修繕にかかる費用について築年数ごとにまとめた表です。
修繕が必要となる時期 (築年数) |
修繕費用の目安 | |
---|---|---|
水回り設備の修繕 |
10〜15年 |
100万〜150万円程 |
給排水管の取り替え |
20年 |
50万円程 |
フローリングの張り替え |
20年 |
15万〜20万円程 (8畳の場合) |
屋根の塗装 |
20年以上 |
100万円程 |
外壁の塗装 |
20年以上 |
100万〜150万円程 |
特に、水回りや外壁の修繕では、100万円以上必要となるケースもあります。
これらの総費用をまとめると、築年数20年前後経過する時点で400万〜500万円程度かかり、修繕が必要になってから準備していては遅いことが分かります。
そのため、毎月メンテナンス費用としてのお金を1万〜2万円積み立てておけば、住宅設備の急な破損や故障にも対応できます。
入居当初から、計画的にシミュレーションしておくことが重要です。
生活している限り、毎月の電気・ガス・水道使用料がかかります。
総務省が公表する家計調査報告によると、ひと月あたりの水道光熱費の平均額は21,531円です。
世帯人数や使用量によっても変化しますが、今後何十年も住み続けることを考えると、大きな金額になることがわかります。
自治会費は、町内会に加入する際にかかる費用です。
町内会への加入は必須ではありませんが、今後長い付き合いを続けていく町内の人たちと、良好な街づくりを行うために加入する方も多いでしょう。
自治会費の相場は、年間で約3,000〜5,000円といわれています。
一戸建てにかかる維持費の項目や金額の目安が分かりました。
なかには、大きな金額のものや、積立が必要なものもありますが、維持費はやり方次第で最低限に抑えることが可能です。
ここからは、一戸建ての維持費を抑える方法について解説していきます。
一戸建ての維持費を抑えるために、物件の検討段階から考えておきたいのが、建物の素材です。
最近では、耐用年数が長い建築の素材が登場しています。
メンテナンス費用を抑えるための素材の例は、以下の通りです。
これらの素材を選べば、メンテナンス費用の節約効果が期待できますが、その分材料費は高額になります。
また、耐用年数が高い素材を選んだとしても、メンテナンスが全く不要となるわけではないため、注意しましょう。
素材の費用と、経年劣化した際のメンテナンス費用を長い目でみてシミュレーションし、できるだけ総コストを抑えられるように計画することが重要です。
メンテナンス費用を抑えるためには、住宅の設備や外壁などに小さな劣化や破損が生じた時点で、すぐに修理・修繕することが重要です。
小さな異常を後回しにせず、早めに対処することで、後に大きな修繕が必要となった際の費用を抑えることにつながります。
異変に気づいたらすぐに業者に連絡できるように準備しておくのもおすすめです。
住宅の設備は、定期的に自分でできる範囲の手入れをすることが非常に重要です。
少し手間がかかりますが、キッチン・浴室・排水トラップの手入れなど、入居者自身ができるメンテナンス作業はたくさんあります。
定期的な手入れにより小さな異変に気づきやすくなったり、大きな劣化を防いだりできるため、結果的に維持費の節約につながるのです。
毎月かかる水道光熱費の節約のため、住宅に省エネの設備を取り入れるのもおすすめです。
太陽光発電を導入したり、建設時に気密性・耐熱性の高い素材を選んだりすることで、電気代やガス代の節約につながります。
高性能な素材は、材料費が高額になるおそれがありますが、材料費に対して毎月の光熱費の節約額が大きければ、費用対効果が得られます。
もちろん、普段からの節電・節水の意識も非常に重要です。
一戸建てを所有している場合、固定資産税の軽減措置が適用となるケースがほとんどです。
知らなければ損をする場合もあるため、しっかりと確認しましょう。
一戸建てを所有する場合に適用される固定資産税の軽減措置を以下の表にまとめました。
軽減措置 | 適用条件 | 軽減措置の内容 |
---|---|---|
新築住宅における軽減措置 |
住宅の床面積が50〜280㎡以下 |
税額×1/2 ※床面積120㎡分までが限度 ※新たに課税される年度から3年度分 |
住宅用地の特例 |
1月1日時点で家屋が建っている土地であること |
小規模住宅用地(住宅用地で住宅1戸につき200㎡までの部分) :評価額×1/6 一般住宅用地(小規模住宅用地以外の住宅用地)部分) :評価額×1/3 |
認定長期優良住宅 |
長期優良住宅の認定を受けた住宅の床面積が50〜280㎡以下 |
税額×1/2 ※床面積120㎡分までが限度 ※新たに課税される年度から3年度分 (3階建以上の準耐火構造及び耐火構造住宅では7年度分) |
一般的に、住宅ローンの契約には火災保険の加入が条件であり、地震保険にも併せて加入するケースが多くみられます。
加入時には、不動産会社から紹介された保険会社だけではなく、他の保険プランも比較検討することが重要です。
費用とプラン内容を照らし合わせて検討することで、無駄な保険料を省けます。
また、一度契約した後も、プラン内容を定期的に見直しましょう。
保険会社がさらにお得な新プランを提供していたり、不要なオプションに気づいたりすることで保険料の削減につながります。
一戸建ての維持費を抑える方法をみてきました。
少し意識するだけでも、長い目でみれば大きく費用を削減できるケースもあります。
さらに、一戸建ての購入や一戸建てからの住み替えを検討する際には、マンションとの違いが気になることも多いのではないでしょうか。
一戸建てとマンションにかかる維持費の違いには、主に以下が挙げられます。
それぞれについて、詳しく解説していきます。
一般的に、固定資産税はマンションのほうが一戸建てより高いです。
総務省が公表する平成30年度住宅・土地統計調査によると、一戸建ての構造は92.5%が木造、共同住宅の構造は87.5%が非木造(鉄骨・鉄筋コンクリート造・鉄骨造)です。
大半のマンションは鉄骨・鉄筋・コンクリートなどの強固な構造を持ち、耐久性に優れているため、資産価値が高く評価され、固定資産税評価額も比較的高くなります。
一方、一戸建ては大半が木造で、マンションの構造と比べて耐久性は低いです。経年劣化の速度が早いため、固定資産税評価額が低くなるのです。
固定資産税を節約したい場合は、一戸建てを選ぶのがおすすめですよ。
火災保険料は、マンションよりも一戸建てのほうが高額となります。
なぜならばマンションの主な構造は、鉄骨・鉄筋コンクリート造や鉄骨造であり、木造の一戸建てよりも防火性が高い素材でつくられているからです。
保険会社のプランや補償内容によっても変化しますが、マンションの火災保険料は、一戸建てでの金額よりも1/2程度は節約できると考えてよいでしょう。
一戸建てとマンションではメンテナンス費用にも違いがあります。
一戸建てでは、将来必要となる設備や外壁などの修理・修繕費はすべて自分で用意します。
一方マンションでは一般的に、毎月支払う修繕積立金から設備等の修繕金がまかなわれます。
マンションによって異なりますが、修繕積立金の平均額は1万1,000円程度です。
約30年間一戸建てに住んだ場合と、マンションに住んだ場合のメンテナンス費の違いを以下にまとめました。
一戸建て | マンション | |
---|---|---|
メンテナンス費用 | 約450万円 | なし |
修繕積立費 | なし | 約400万円 |
一戸建てのメンテナンス費用と修繕積立金を比較すると、あまり大きな差はみられません。
しかし、マンションでは修繕積立費の他に、管理費や駐車場代を月々払う必要があります。
管理費・駐車場代に関しても、以下で解説しているので、参考にしてください。
管理費とは、マンションの階段・廊下・エレベーターなどの共用部分の清掃・メンテナンスや、ごみ収集処理などに充てられる費用です。
マンションの住民は、定められた管理費を毎月支払う必要があります。
管理費の平均額は約1万円で、修繕積立金とあまり違いはありません。
一戸建てに住む場合は、この管理費は不要です。
そのため、約30年間一戸建てに住んだ場合と、マンションに住んだ場合では、出費の差が約360万円となります。
長い目で見るとかなり大きな出費となりますが、その他の税金や保険料などを合わせたトータルの費用でシミュレーションすることが重要です。
一戸建てでは、駐車場が併設されている家を選べば駐車場代はかかりません。
しかしマンションでは、駐車場を利用する場合、駐車場代が発生する場合がほとんどです。
駐車場代の平均額は、約5,000〜3万円といわれていますが、エリアやマンションによって大きく異なるため、検討している物件の駐車場代について事前に調べることが重要です。
月々の支払い額を考えるとあまり負担はないかもしれませんが、長い目で見ると大きな出費となります。
購入前に、計画的なシミュレーションを行いましょう。
一戸建てとマンションの維持費の違いについて解説してきました。
固定資産税・火災保険料・メンテナンス費用・管理費・駐車場代について、一戸建てとマンションの違いをまとめると以下のようになります。
一戸建て | マンション | |
---|---|---|
固定資産税 | 一戸建て<マンション | |
火災保険料 | 一戸建て<マンション | |
メンテナンス費用 |
約450万円/30年間 1万〜2万円/月(積立) |
約1万1,000円/月 |
管理費 | 0円 | 約1万円/月 |
駐車場代 | 0円 | 約5,000〜3万円/月 |
管理費・駐車場代がマンションのみにかかり、固定資産税もマンションのほうが高い傾向があることを考えると、維持費の合計はマンションのほうが高いといえます。
ただし、マンションでは毎月の管理費・修繕積立金を支払う代わりに、管理会社が清掃やメンテナンスを行ってくれるため、メンテナンスの手間が省けることがメリットです。
ここまでの内容を踏まえて、維持費の観点から一戸建てはどんな人におすすめなのかをまとめてみました。
▼一戸建てを選ぶべき人
実際には、一戸建てもマンションも、物件やエリアによって維持費の相場は前後します。
物件の購入を検討する人は、まずは情報収集してシミュレーションすることが重要です。
一戸建てにかかる維持費には、さまざまな項目があります。これらは主に、住み始めてから発生する費用ですが、物件の検討段階でどれくらいの金額がかかるのかをシミュレーションしましょう。綿密な資産計画が重要です。
一戸建ての維持費を抑える方法がいくつか存在します。知識がなければ損をしてしまうことも少なくありません。住宅の建設段階からできる対策もあるため、しっかりと確認しておきましょう。
一戸建てでは、マンションと比較して維持費のトータル額が低い傾向があります。ただし、その分自分自身で定期的に設備の確認をしたり、できる範囲で手入れしたりする必要があります。この手間が許容でき、維持費を抑えたい人にとっては、マンションよりも一戸建てがおすすめですよ。
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