この記事では、日照権について解説します。
日照権は、建物が太陽光を適切に受けられる権利です。しかし、具体的に定められている法律は存在せず、複雑なトラブルに発展するケースも少なくありません。
この記事では、日照権のよくあるトラブル事例や実際の判例集をもとに、回避するためのポイントも解説します。日照権について疑問や不安がある人は、ぜひ参考にしてください。
主に、住宅や庭に日光が差し込む環境が保たれることを求める権利です。
隣接する建物の高さや位置によって日光が遮られた場合、日照権をめぐる問題が発生しやすくなります。ここでは、日照権について以下3点から見ていきましょう。
順番に解説します。
参考1:
参考2:
参考3:
日照権においては、隣接する建物によってもたらされる影が社会的に許容される範囲内であるかが判断基準となります。
日照権の受忍限度は建物の用途や周辺環境、日照時間などによって異なる点に注意してください。
たとえば、日中の長時間にわたって日照が遮られる住宅では、健康被害や生活の質の低下が懸念され、受忍限度を超えると判断されることがあります。
一方で、都市部の高層ビルが立ち並ぶエリアでは、ある程度の日照制限は社会的に容認される傾向があります。
この規定では、建物の高さや形状を制限することで、周辺環境に対する影響を最小限に抑えることが目的とされています。
そのため、住宅や施設の新築・増改築を検討している場合は、単に建築基準法に適合しているかだけでなく、周辺住民への日照影響にも十分に配慮する必要があります。
ここでは、日照権に関してよく発生するトラブル事例を見ていきましょう。
上記5つの事例についてそれぞれ開設していきます。
隣家の庭に植えられた樹木が成長して自分の敷地に影を作る場合、まずは適度な剪定を隣家の住民に依頼することが大切です。
ただし、2023年の4月より、以下に該当する場合は敷地内に侵入した隣家の樹木を切除できることとなりました。条件 |
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竹木の所有者に越境した枝を切除するよう催告したが、竹木の所有者が相当の期間内に切除しないとき 竹木の所有者が分からず、またはその所在が分からないとき 台風などの災害時など、急迫の事情があるとき |
※参考:
特に、マンションが家の南側に建設された場合、洗濯物を干したりベランダで植物を育てたりすることが難しくなるでしょう。
マンションの建築前説明会などが近隣住民向けに開かれる場合、そこで日当たりについて確認することが重要です。
特に、自家発電に依存している家庭や売電を実施している家庭では、大きな経済的影響が出るおそれがあります。
本来得られるはずだった太陽光発電による利益を個人的に請求することは難しく、法律に関する専門家への相談が望ましいでしょう。
特に、日光が欠かせない野菜や果物を育てている人にとって、日当たりが遮られると作物の成長が大きく妨げられてしまうでしょう。
朝や夕方など、一時的に影になる場合は肥料などで対処できる可能性があります。しかし、1日を通して影になってしまう場合、要因となっている建物の所有者に相談することを推奨します。
大型商業施設の周辺に居住した場合、住宅に日当たりが差し込む時間が極端に短くなる場合があります。
建設計画の段階で地域住民への影響が考慮されるべきですが、実際には十分に配慮されないことがあるでしょう。周囲に大型商業施設があることを確認したうえで、引っ越しをする場合には、周辺地域の不動産屋や住民に日当たりについて確認しておくことがおすすめです。
ここでは、日照権に関連する実際の判例集を見ていきましょう。
上記2つのケースを解説します。
ここでは、日照権が認められたケースとして、札幌地方裁判所の判例を紹介します
この裁判では、隣接する土地に建てられた建物によって、日照権と人格権が侵害されたという原告の主張が認められました。
原告は被告よりも12年早く該当の土地を購入しており、被告の建物が建築基準法の制限に近かったことも踏まえ、原告の受忍限度を超える侵害だと判断されています。実際に下された判決は以下のとおりです。
この裁判では、日照権を侵害した建物の切除だけでなく、賠償金も求められる判決になっています。
参考:
日照権が認められなかったケースとして、京都地方裁判所の判例を紹介します。
この裁判では、地上5階建てのマンションに対し、日照権だけでなく以下3つの点より近隣住民からの訴えがありました。
裁判で、騒音による被害とそれに対するマンション側の賠償責任は認められました。
ただし、日照権については以下の理由から受忍限度だと判断されず、日照権の侵害は認められませんでした。この裁判では、複数の住民が騒音と合わせて日照権の侵害を訴えましたが、認められない結果になりました。
参考:
上記4つのポイントについて順番に解説します。
相談せずむやみに行動してしまった場合、かえって相手を不快にさせるおそれがあります。一度指摘して応じてくれるようであれば、特段大きなトラブルもなく解決できるでしょう。
話し合いで解決が難しいと感じたら、各都道府県や市区町村の行政窓口に相談しましょう。
建築物に関する法律や地域の条例に関する知識を持っており、それを基に中立的な立場からアドバイスを受けられるでしょう。行政に相談しても解決が難しい場合、地域の紛争解決機関を紹介してもらえるケースがあります。
建築工事が完了してしまう前に問題を解決するための緊急対応といえ、提出には専門家の助言が必要です。まずは、紛争解決機関や弁護士に相談することを推奨します。
裁判では、日照権の侵害有無について、影響の大きさや受忍限度を基に判断されます。ただし、訴訟には時間と費用がかかるため、慎重に検討してください。
ここからは、日照権トラブルで専門家に相談すべきケースについて解説します。
順番に見ていきましょう。
隣接する建物が建築基準法に違反している可能性がある場合は、専門家に相談することが重要です。
日影規制や高さ制限、斜線制限などのルールに違反していれば、行政指導や是正命令の対象になることがあります。
ただし、一般の方が法令違反を正確に判断するのは難しく、自治体への相談や調査依頼にも専門的な知識が求められます。新築や増改築により日照が極端に遮られ、日中でも照明が必要になる、洗濯物が乾かないなど生活への深刻な影響が出ている場合は、受忍限度を超えている可能性があります。
日照時間の計測や影響度の調査など、専門的な検証が必要なため、法律の専門家に相談することで、正当な権利主張ができるかを判断できます。損害賠償を求めたり、工事の中止や建物の変更を請求したい場合も、専門家に相談するのがおすすめです。
これらの請求を成立させるためには、被害の程度や違法性を証明する必要があり、個人で進めるには限界があります。専門家に依頼すれば、必要な証拠の収集や法的根拠の整理、交渉・訴訟対応まで一貫してサポートを受けられます。正当な権利を守るためにも、早い段階での相談が有効です。
ここでは、日照権に関してよくある質問を紹介します。
疑問の解決にお役立てください。
法律や地域条例に基づいて中立的なアドバイスを受けられます。
また、近隣トラブル解決を専門に扱う無料相談窓口の利用も可能です。地域によっては、弁護士や司法書士による無料相談会が開催されている場合があります。
隣家との距離が近い場合、互いの日照権を守るために建物の配置や設計の工夫が必要です。
具体的な手段として、窓の位置を調整して光を効率的に取り入れたり、屋根の形状を工夫して影の影響を軽減したりする方法が挙げられます。
また、庭に植える植物を低木にするなど、日照の確保に配慮することも効果的です。ただし、問題が発生した場合には日影の程度や受け入れるべき範囲(受忍限度)が、判断の基準となります。
現在日照権に関する問題がある場合には、裁判所の判例などから自分に近い事例を見つけて判断することが方法の1つです。
この記事では、日照権について解説しました。
日照権は、生活に必要な日当たりを取り入れて快適に暮らすための権利です。土地や建物を購入した順番に関係なく、全ての人に主張する権利があります。
ただし、実際の裁判などでは、日影の程度や受忍限度を超えているかなどの観点から、日照権の侵害に関する判断が下されます。個人的な解決が難しい場合には、自治体や弁護士などの専門家に相談するのがおすすめです。
日当たりや周囲との建物配置が気になる方にとって、日照権の理解は住まい選びの大切なポイントです。
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記事監修
宅地建物取引士/日商簿記2級/ビジネス会計検定2級
中野営業センターのオープニングスタッフとして3年間、営業職として活躍。その後、経営企画部門、経理部門にて株式上場、企業M&A、決算業務、業績開示等に従事。
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