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家と暮らしのコラム
日照権とは?よくあるトラブル事例や実際の判例集も紹介

日照権とは?よくあるトラブル事例や実際の判例集も紹介

2025年3月13日(木)

家さがしの知識

この記事では、日照権について解説します。

日照権は、建物が太陽光を適切に受けられる権利です。しかし、具体的に定められている法律は存在せず、複雑なトラブルに発展するケースも少なくありません。

この記事では、日照権のよくあるトラブル事例や実際の判例集をもとに、回避するためのポイントも解説します。日照権について疑問や不安がある人は、ぜひ参考にしてください。


【この記事でわかること】

  • 日照権とは?
  • 日照権でよくあるトラブル事例
  • 日照権に関する実際の判例集
  • 日照権をめぐるトラブルを回避するためのポイント

日照権とは?

日照権とは、日常生活を送る建物で良好な日当たりを受けられる権利を指します。

主に、住宅や庭に日光が差し込む環境が保たれることを求める権利です。

隣接する建物の高さや位置によって日光が遮られた場合、日照権をめぐる問題が発生しやすくなります。ここでは、日照権について以下3点から見ていきましょう。

  • 日照権にかかわる法律
  • 日照権において重要な受忍限度
  • 日照権と建築基準法との関連性

順番に解説します。

日照権にかかわる法律

日照権について直接的に定めている法律はありませんが、日照権を根拠付けるものとして憲法13条の幸福追求権25条の生存権が挙げられます。

また、日照権をめぐる裁判などでは民法709・710条の不法行為が争点となるケースが多くあります。
その他、斜線制限や日影規制を規定している建築基準法56条がありますが、これに違反しない場合でも日照権は保護されるべきものと認識しておきましょう。

参考1:

日本国憲法丨e-GOV


参考2:

民法丨e-GOV


参考3:

建築基準法丨e-GOV


日照権において重要な受忍限度

受忍限度とは、生活上受け入れられる不便の限度を指します。

日照権においては、隣接する建物によってもたらされる影が社会的に許容される範囲内であるかが判断基準となります。

日照権の受忍限度は建物の用途や周辺環境、日照時間などによって異なる点に注意してください。

日照権と建築基準法との関連性

先述のとおり、建築基準法の56条では斜線制限や日影規制を規定しています。

この規定では、建物の高さや形状を制限することで、周辺環境に対する影響を最小限に抑えることが目的とされています。

建築基準法56条は、日照権以外に侵害し得る権利も保護するものとなっているため、住宅などの建築を予定している場合は一度確認することをおすすめします。

日照権でよくあるトラブル事例

ここでは、日照権に関してよく発生するトラブル事例を見ていきましょう。

  • 敷地内に隣家の樹木が侵入してきた
  • マンションが建設されて住宅への日光が遮られた
  • 日光が遮られて太陽光発電が機能しなくなった
  • 日光が遮られて畑の作物が育たなくなった
  • 大型商業施設の近くに住んだら日光が差し込まなかった

上記5つの事例についてそれぞれ開設していきます。

敷地内に隣家の樹木が侵入してきた

隣家の庭に植えられた樹木が成長して自分の敷地に影を作る場合、まずは適度な剪定を隣家の住民に依頼することが大切です。

ただし、2023年の4月より、以下に該当する場合は敷地内に侵入した隣家の樹木を切除できることとなりました。

条件
  • 竹木の所有者に越境した枝を切除するよう催告したが、竹木の所有者が相当の期間内に切除しないとき
  • 竹木の所有者が分からず、またはその所在が分からないとき
  • 台風などの災害時など、急迫の事情があるとき


参考:

【民法改正】越境した竹木の枝の切取りルールの変更丨国分寺市

隣家が剪定に応じない場合には、自身で侵入してきた部分を切除することを検討してみましょう。

マンションが建設されて住宅への日光が遮られた

近隣に高層マンションが建設されると、住宅への日光がほとんど届かなくなるケースがあります。

特に、マンションが家の南側に建設された場合、洗濯物を干したりベランダで植物を育てたりすることが難しくなるでしょう。

マンションの建築前説明会などが近隣住民向けに開かれる場合、そこで日当たりについて確認することが重要です。

日光が遮られて太陽光発電が機能しなくなった

太陽光発電を設置している場合、隣接する建物や樹木によって日光が遮られると発電量が減少します。

特に、自家発電に依存している家庭や売電を実施している家庭では、大きな経済的影響が出るおそれがあります。

本来得られるはずだった太陽光発電による利益を個人的に請求することは難しく、法律に関する専門家への相談が望ましいでしょう。

日光が遮られて畑の作物が育たなくなった

ベランダや庭、屋上などに畑を設けている場合、育てている作物の成長に影響するおそれがあります。

特に、日光が欠かせない野菜や果物を育てている人にとって、日当たりが遮られると作物の成長が大きく妨げられてしまうでしょう。

朝や夕方など、一時的に影になる場合は肥料などで対処できる可能性があります。しかし、1日を通して影になってしまう場合、要因となっている建物の所有者に相談することを推奨します。

大型商業施設の近くに住んだら日光が差し込まなかった

大型商業施設の周辺に居住した場合、住宅に日当たりが差し込む時間が極端に短くなる場合があります。

建設計画の段階で地域住民への影響が考慮されるべきですが、実際には十分に配慮されないことがあるでしょう。

周囲に大型商業施設があることを確認したうえで、引っ越しをする場合には、周辺地域の不動産屋や住民に日当たりについて確認しておくことがおすすめです。

日照権に関する実際の判例集

ここでは、日照権に関連する実際の判例集を見ていきましょう。

  • 日照権が認められたケース
  • 日照権が認められなかったケース

上記2つのケースを解説します。

日照権が認められたケース

ここでは、日照権が認められたケースとして、札幌地方裁判所の判例を紹介します

この裁判では、隣接する土地に建てられた建物によって、日照権と人格権が侵害されたという原告の主張が認められました。

原告は被告よりも12年早く該当の土地を購入しており、被告の建物が建築基準法の制限に近かったことも踏まえ、原告の受忍限度を超える侵害だと判断されています。

実際に下された判決は以下のとおりです。

  • 被告は、所有する土地に建築した木造2階建て建物のうち、2階東部分を切除して撤去する。
  • 被告は原告に対し、300万円及びこれに対する令和元年6月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払う。

この裁判では、日照権を侵害した建物の切除だけでなく、賠償金も求められる判決になっています。

参考:

令和1(ワ)1175 損害賠償請求事件丨裁判所

日照権が認められなかったケース

日照権が認められなかったケースとして、京都地方裁判所の判例を紹介します。

この裁判では、地上5階建てのマンションに対し、日照権だけでなく以下3つの点より近隣住民からの訴えがありました。

  • 騒音
  • 景観権・景観利益侵
  • プライバシー侵害

裁判で、騒音による被害とそれに対するマンション側の賠償責任は認められました。

ただし、日照権については以下の理由から受忍限度だと判断されず、日照権の侵害は認められませんでした。

  • 日照を侵害する時間が1日のうち2時間程度であった。
  • 1階部分の日当たりが侵害されていても2階部分には日当たりがあった。 など

この裁判では、複数の住民が騒音と合わせて日照権の侵害を訴えましたが、認められない結果になりました。

参考:

平成19(ワ)824  損害賠償請求事件丨裁判所



日照権をめぐるトラブルを回避するためのポイント

  • まずは近隣住民と話し合いを進める
  • 各都道府県の行政に相談する
  • 建築工事差止めの仮処分を申し立てる
  • 最終手段として訴訟を起こす

上記4つのポイントについて順番に解説します。

まずは近隣住民と話し合いを進める

行政や弁護士などに相談する前に、近隣住民同士での話し合いを行うことが重要です。

相談せずむやみに行動してしまった場合、かえって相手を不快にさせるおそれがあります。一度指摘して応じてくれるようであれば、特段大きなトラブルもなく解決できるでしょう。

各都道府県の行政に相談する

話し合いで解決が難しいと感じたら、各都道府県や市区町村の行政窓口に相談しましょう。

建築物に関する法律や地域の条例に関する知識を持っており、それを基に中立的な立場からアドバイスを受けられるでしょう。

行政に相談しても解決が難しい場合、地域の紛争解決機関を紹介してもらえるケースがあります。

建築工事差止めの仮処分を申し立てる

日照被害をもたらすおそれがある建物が建築中の場合、裁判所に『建築工事差止めの仮処分』の申し立てができます。

建築工事が完了してしまう前に問題を解決するための緊急対応といえ、提出には専門家の助言が必要です。まずは、紛争解決機関や弁護士に相談することを推奨します。

最終手段として訴訟を起こす

どうしても解決が見込めない場合は、最終手段として訴訟を検討しましょう。

裁判では、日照権の侵害有無について、影響の大きさや受忍限度を基に判断されます。ただし、訴訟には時間と費用がかかるため、慎重に検討してください。

日照権に関するよくある質問

ここでは、日照権に関してよくある質問を紹介します。

  • 日照権の相談窓口はどこ?
  • 隣の家との距離が近い場合の工夫は?
  • 後から入居した人に日照権を主張する権利はある?

疑問の解決にお役立てください。

日照権の相談窓口はどこ?

日照権に関する相談は、市区町村の建築指導課や地域の環境部門に問い合わせることが一般的です。

法律や地域条例に基づいて中立的なアドバイスを受けられます。

また、近隣トラブル解決を専門に扱う無料相談窓口の利用も可能です。地域によっては、弁護士や司法書士による無料相談会が開催されている場合があります。

隣の家との距離が近い場合の工夫は?

隣家との距離が近い場合、互いの日照権を守るために建物の配置や設計の工夫が必要です。

具体的な手段として、窓の位置を調整して光を効率的に取り入れたり、屋根の形状を工夫して影の影響を軽減したりする方法が挙げられます。

また、庭に植える植物を低木にするなど、日照の確保に配慮することも効果的です。

後から入居した人に日照権を主張する権利はある?

日照権は先に住んでいたか後から住んだかに関係なく、基本的には誰にでも主張する権利があります。

ただし、問題が発生した場合には日影の程度や受け入れるべき範囲(受忍限度)が、判断の基準となります。

現在日照権に関する問題がある場合には、裁判所の判例などから自分に近い事例を見つけて判断することが方法の1つです。

日照権の基準や仕組みを理解してトラブルを防ごう

この記事では、日照権について解説しました。

日照権は、生活に必要な日当たりを取り入れて快適に暮らすための権利です。

土地や建物を購入した順番に関係なく、全ての人に主張する権利があります。

ただし、実際の裁判などでは、日影の程度や受忍限度を超えているかなどの観点から、日照権の侵害に関する判断が下されます。個人的な解決が難しい場合には、自治体や弁護士などの専門家に相談することを推奨します。

記事監修

小軽米 篤史

宅地建物取引士/日商簿記2級/ビジネス会計検定2級
中野営業センターのオープニングスタッフとして3年間、営業職として活躍。その後、経営企画部門、経理部門にて株式上場、企業M&A、決算業務、業績開示等に従事。

  • 2025年1月時点の内容です。