この記事では、土地の権利書について解説します。
土地の権利書とは、登記簿に登録されている名義人が土地の所有者であることを証明する書類です。正式名称は”登記済権利証”であり、土地の売却時には自分が所有者であることを示すためにこの権利書を提示する必要があります。
この記事では、土地の権利書の概要について、紛失した場合や盗まれた場合の対処法を解説します。売却時に権利書以外で必要な手続きも合わせてお伝えするので、ぜひこの記事を参考にしてください。
【この記事でわかること】
土地の権利書は、土地の所有権を証明するための書類です。
土地の権利書は所有者が不動産を売却して買主に名義を変更する際や、ローンの借り換えなどで新しく抵当権を設定する場合などに法務局へ提出します。正式には"登記済権利証"と呼ばれ、当時は購入や相続によって土地を取得した人に対し、登記が完了した際に法務局から交付されていました。
ただし、平成17年(2005年)3月に『不動産登記法』が改正されたことにより土地の権利書は廃止され、現在はオンラインで所有者に関する情報が管理されています。
ここでは、土地の権利書について以下2点から見ていきましょう。
不動産登記法丨e-GOV 法令検索
※参考2:
権利書と登記簿はよく混同される書類ですが、それぞれ役割と管理方法が異なります。権利書は、登記簿に記載されている名義人が正式に土地の所有者であることを示す書類です。
一方、登記簿には所有者情報の他に土地の所在や面積なども記載されており、誰もが権利関係などの状況を把握できるようにして、不動産取引が安全かつ円滑に進められるよう促す目的があります。
また、土地の権利書は所有者が自分で管理しますが、登記簿は法務局が管理しています。登記簿謄本を取得したい際には法務局の窓口で請求するか、郵送、またはオンラインサービスによる請求が必要です。
※参考1:不動産登記のABC丨法務省
※参考2:
登記簿謄本(登記事項証明書)はどのように請求すればよいのですか?丨新潟地方法務局
登記識別情報は、土地の登記が完了すると法務局から所有者に通知される英数字12桁の情報です。土地の権利書と同様に登記簿の名義人が土地の所有者であることを公式に証明し、土地の売却時には法務局へ提出することが求められています。
登記識別情報は、平成17年の不動産登記法改正によって、権利書の代わりとして導入されました。
登記識別情報が導入された目的として、『e-Japan戦略』によるIT社会の実現が挙げられます。登記識別情報は電子データとして管理されているため、権利書を廃止して不動産登記の電子申請を普及させることが狙いです。
※参考1:
登記識別情報を紛失したのですが、どうしたらよいのですか?丨法務局
※参考2:
土地の権利書のみを紛失した場合でも、実印や印鑑証明書をしっかりと管理していれば、勝手に登記されることはありません。
ただし、土地の権利書は再発行できませんので、土地を売却したい場合には以下3つの対処法のどれかを検討する必要があります。
上記3点について順番に解説します。
土地の所有権移転登記が申請された際、法務局から登記簿に登録された名義人に"事前通知"が送付されます。事前通知は、土地の所有者に対して申請された登記手続きを問題なく進めても構わないか、もしくは申請内容に問題はないかなどを確認するためのものです。
法務局から通知された内容に誤りがない場合は、2週間以内に申し出が必要です。これによって本人確認がなされ、登記手続きが進められます。
※参考:登記識別情報を紛失したのですが、どうしたらよいのですか?丨法務局
この制度は、土地の権利書や登記識別情報を法務局に提出できない際に事前通知制度を省略できるものです。
資格者代理人には、司法書士や弁護士が該当します。代理人が法務局の登記官に本人確認情報を提供し、登記官が情報の内容を適正だと判断した場合、事前通知制度の省略が可能です。
もちろん、事前通知制度を利用して問題なければ、そのまま登記手続きを進められます。ただし、代金を支払ったのにもかかわらず、事前通知の手続きが滞り登記がされないなどのリスクがあり、他人同士の不動産売買では事前通知制度はあまり利用されていません。
最初から、資格者代理人による本人確認証明情報の提供制度の利用を検討することも、選択肢の1つです。
※参考:登記識別情報を紛失したのですが、どうしたらよいのですか?丨法務局
公証人とは、裁判官や弁護士、検察官などの法律業務に長年従事した者の中から、法務大臣の指名を受けた公務員のことです。全国に500名ほど在籍しており、その名簿は法務省の公式サイトなどで確認できます。
本人確認制度では、公証人の前で登記申請委任状などに署名・捺印を行い、公証人からそれらの書類が真正なものだと認証を受ける手続きです。公証人から認証された書類を法務局に提出することで、本人確認がされて登記手続きが進められます。
ただし、印鑑証明書や実印、本人確認書類などを持って公証役場が開いている平日に直接出向く必要があります。
※参考1:公証人とは丨日本公証人連合会
※参考2:
土地の権利証が盗まれた場合、すぐに悪用されることは考えにくいといえます。不動産登記には本人確認書類や実印なども必要となり、権利証だけでは不正な登記が実行されません。
ただし、盗まれた情報が不正利用されるリスクを抑えるために、以下2つの対処法を押さえておきましょう。
順番に解説します。
不正登記防止の申出制度は、不正な登記が行われるリスクがある場合に利用できる制度です。
申出から3ヶ月以内に登記が申請された場合、登記申請された旨が通知されます。身に覚えのない登記が通知された場合、法務局に申し出ることで不正登記を防止できます。
申出をする際には、基本的に登記簿に名義人として登録されている本人が法務局へ出向かなければなりません。
ただし、やむを得ない事情がある場合は代理人が申出をすることも可能です。
※参考:不正登記防止の申出と同様に、基本的には登記簿に登録されている名義人本人が申出をしますが、相続人やその他一般承継人による申出も可能です。
登記識別情報の失効申出は、法務省が運営する『登記ネット』も利用できます。
※参考1:
登記識別情報を紛失したのですが、どうしたらよいのですか?丨法務局
※参考2:
ここでは、土地を売却する際に権利書以外で必要となる手続きについて解説します。
順番に見ていきましょう。
売却する土地の登記簿に記載された所有者の氏名や住所が変わる場合、氏名・住所変更登記を行う必要があります。
例えば、結婚によって名字が変わった場合や転勤などで引越しした場合などが該当します。
この手続きでは、登記申請書の他に住民票の写しなど変更内容を証明する書類が必要です。情報が一致していない場合、買主が所有権移転登記を行う際に支障をきたすおそれがあります。
※参考:転勤等で引っ越した方へ(住所の変更登記手続のご案内) 一戸建て編丨法務局
土地に抵当権が設定されている場合、売却前に抵当権抹消登記を行います。抵当権とは、債権者が債務者の不動産を担保として設定し、債務不履行時にその不動産から優先的に弁済を受ける権利です。
抵当権を抹消するには、金融機関が発行する登記原因証明情報(解除証書や弁済証書など)や、代理権限証明情報(委任状)が必要です。登記申請書を事前に作成しておく必要があるため、余裕を持って行いましょう。
抵当権抹消登記は司法書士に依頼することも可能ですが、自分で行う場合は法務局のガイドを見ながら行うと安心です。
※参考:住宅ローンを完済した方へ(抵当権の登記の抹消手続きのご案内) 一戸建て編丨法務局
土地を買主に引き渡す際には、所有権移転登記が必要です。通常、売買契約が成立して代金の支払いが完了したあとに実施されます。
所有権移転登記には、本人確認書類や印鑑証明書、固定資産評価証明書や住民票など、さまざまな書類が必要です。提出書類に漏れや誤りがあると売買や相続が滞るため、不安な場合は司法書士に依頼することがおすすめです。
また、所有権移転登記の申請書は土地の取得方法によって申請書の様式が異なるため、注意して選びましょう。
※参考:ここでは、土地の権利書に関するよくある質問に回答します。
疑問の解消にお役立てください。
先述のとおり、現在では土地の権利書(登記済権利証)に変わって登記識別情報が交付されています。不動産の登記手続きを行ってから1〜2週間後に法務局が審査を完了させるので、その後に登記識別情報通知が発行されるケースが一般的です。
登記識別情報はオンラインでダウンロードすることで取得できますが、郵送で受け取ることも可能です。郵送の場合、登記申請から2〜3週間後に受け取れるでしょう。
また、司法書士に登記手続きを依頼した場合は司法書士から登記識別情報を受け取ります。
※参考:登記識別情報通知とは?丨司法書士法人 不動産名義変更手続センター
住宅ローンを組む際には、土地の権利書が必要です。
金融機関は、万が一返済が滞った場合に差し押さえができる権利を得るため、住宅や土地に抵当権を設定します。抵当権を設定する際の登記申請では、土地の権利書が必要です。
権利書を紛失してしまった場合には、司法書士による本人確認証明制度を利用して証明書を取得すれば、住宅ローンを組める可能性があります。
まずは、司法書士や金融機関に相談してみましょう。
※参考:Case2 大事な『権利証』を紛失して困っています丨日本司法書士会連合会
土地の権利書を司法書士に預けること自体に問題はありません。多くの場合、不動産売買や住宅ローンの手続きを進めるために司法書士が一時的に権利書を預かることになります。
ただし、預ける際には信頼できる司法書士に依頼し、不要になった際はすぐに返却してもらうことが大切です。権利書や登記識別情報は、所有者の不動産を証明する大切な書類ですので、自分で厳重に保管することが推奨されます。この記事では、土地の権利書について解説しました。
土地の権利書は、売却する際や住宅ローンの借り換えをする際に必要となる書類です。一度紛失すると再発行はできませんので、自分でしっかりと管理しましょう。また、盗まれてしまった際には適切に対処し、不正登記を速やかに防止することが大切です。必要に応じて法務局や司法書士と相談しながら、手続きを進めましょう。
記事監修
宅地建物取引士/日商簿記2級/ビジネス会計検定2級
中野営業センターのオープニングスタッフとして3年間、営業職として活躍。その後、経営企画部門、経理部門にて株式上場、企業M&A、決算業務、業績開示等に従事。
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