この記事では、長期優良住宅の認定条件について解説します。
長期優良住宅とは、長期的に快適な生活を送れる住宅のことです。長期優良住宅の認定を受けた住宅は、地震保険や住宅ローン、減税・補助金制度で優遇を受けられます。
この記事では、長期優良住宅の認定を受けるメリット・デメリットや流れも解説するので、住宅の購入や建て替えを検討している人は、ぜひ参考にしてください。
【この記事でわかること】
2009年から新築住宅における認定が始まり、2016年に増築や改築をする既存住宅に対して、2022年に増築や改築を伴わない既存住宅に対する認定が始まりました。
認定の基準には省エネ性や耐震性、維持管理の容易性などが含まれており、長期優良住宅に該当する住宅は優遇措置を受けられるだけでなく、長く快適に過ごせる家だといえます。
※参考:
ここでは、長期優良住宅の主な認定条件を見ていきましょう。
まずは、基本の認定条件を表にまとめました。
性能項目など | 認定条件 |
---|---|
劣化対策 | |
劣化対策等級(構造躯体など)が等級3で、かつ構造の種類に応じて以下の基準を満たしていること
| |
維持管理・更新の容易性 | 専用配管:維持管理対策等級3 |
【共同住宅の場合】
| |
バリアフリー性 | 共用部分の高齢者等配慮対策等級3 |
居住環境 | 地区計画・景観計画・条例によるまちなみなどの計画・建築協定・景観協定などの区域内にある場合には、これらの内容と調和を図ること |
維持保全計画 | |
以下の3つの部分や設備の定期的な点検・補修などに関する計画を定めること
| |
災害配慮 | 災害発生のリスクがある地域においては、そのリスクの高さに応じて、所管行政庁が定めた措置を講じること |
※参考:
ここからは、それぞれの住宅で異なる点を解説します。
新築住宅の場合、上記の共通する認定条件の他に、以下の4点を満たす必要があります。
性能項目など | 認定条件 |
---|---|
耐震性 | |
次のいずれかに該当すること
| |
省エネルギー性 | 断熱等性能等級5、かつ一次エネルギー消費量等級6 |
可変性 | 躯体天井高さ2,650mm以上※共同住宅や長屋の場合 |
住戸面積 |
|
少なくとも、階段部分を除いた1つの階の床面積が40㎡以上 |
※参考:
新築住宅の場合、床面積に関する認定条件が物件種別で異なります。
一戸建てと共同住宅のどちらの場合でも、1つの階の床面積が階段部分を含めずに40㎡以上でなければならないため、設計時点での注意が必要です。戸建て住宅であるため、可変性や共用部分の維持管理・更新の容易性、バリアフリー性など、共同住宅に必要な認定条件は不要となります。
木造軸組とは、柱や梁などの軸組で家を支える日本の代表的な工法です。同じ木造住宅でもフレーム状に枠組みを作る木造枠組壁工法とは大きく異なるため、事前に特徴を確認しておくことがおすすめです。
※参考:
新築戸建(木造軸組)編 長期優良住宅認定制度の技術基準の概要について丨国土交通省
既存住宅の場合、長期優良住宅の認定条件は以下のとおりです。
性能項目など | 認定条件 |
---|---|
耐震性 | |
次のいずれかに該当すること
| |
省エネルギー性 | 断熱等性能等級3、かつ一次エネルギー消費量等級4 |
可変性 | |
次のいずれかに該当すること(※共同住宅や長屋の場合)
| |
住戸面積 |
|
少なくとも、階段部分を除いた1つの階の床面積が40㎡以上 |
※参考:
既存の共同住宅の場合、床面積の要件が新築住宅より15㎡も大きくなっています。
ただし、省エネ性や耐震性など、それ以外の認定基準では条件が新築住宅より緩和されているといえます。増築や改築を行った住宅の場合、認定条件は以下のようになります。
性能項目など | 認定条件 |
---|---|
耐震性 | |
次のいずれかに該当すること
| |
省エネルギー性 | 断熱等性能等級3、かつ一次エネルギー消費量等級4 |
可変性 | |
次のいずれかに該当すること(※共同住宅や長屋の場合)
| |
住戸面積 |
|
少なくとも、階段部分を除いた1つの階の床面積が40㎡以上 |
※参考:
増築・改築編 長期優良住宅認定制度の概要について丨国土交通省
増築・改築をした住宅における長期優良住宅の認定条件は、床面積を除いて既存住宅の条件と同様です。床面積の条件は新築住宅と同様であり、共同住宅においては40㎡以上であることが定められています。分譲マンションの場合、長期優良住宅の認定条件は以下のとおりです。
性能項目など | 認定条件 |
---|---|
耐震性 | |
次のいずれかに該当すること
| |
省エネルギー性 | 断熱等性能等級5、かつ一次エネルギー消費量等級6 |
可変性 | 躯体天井高さ2,650mm以上 |
住戸面積 | 40㎡以上 |
※参考:
分譲マンション版 長期優良住宅認定制度の概要について丨国土交通省
分譲マンションの認定条件は、基本的に新築住宅と同様です。
共同住宅であるため、バリアフリー性や可変性など共同住宅に設定された条件も全て満たす必要があります。分譲マンションに居住する場合には、施工会社などに認定条件を満たしているか確認してから申請することを推奨します。
ここでは、長期優良住宅の認定を受ける以下4つのメリットを解説します。
順番に見ていきましょう。
長期優良住宅の認定を受けると、住宅ローンの融資を受ける際に金利が引き下げられる場合があります。
たとえば、住宅金融支援機構が提供しているフラット35を利用する場合、借入当初の5年間は年あたり0.75%引き下げられます。フラット35子育てプラスを利用する若年世帯や子どもが1人いる世帯では、引き下げ率が年間1.0%です。※参考:
長期優良住宅に認定される住宅は、耐震性能が高い住宅です。そのため、地震による大きな被害に遭うリスクが低く、地震保険に加入する際に以下のような割引を受けられます。
住宅の地震対策 | 割引率 |
---|---|
耐震等級2 | 30% |
耐震等級3 | 50% |
品確法で定められた免震建築物 | 50% |
※参考:
日本は大きな地震が頻繁に発生するため、家族の未来を守るために地震保険に加入する世帯が多くあります。
耐震性能を高めて上記のような割引を受けられれば、ランニングコストを抑えながら安心して生活できるでしょう。まず、所得税で減税を受けられる住宅ローン控除では、以下の措置を受けられます。
住宅の種類 | 控除限度額 | 控除期間 | |
---|---|---|---|
新築住宅 | 長期優良住宅 | 4,500万円 | 13年間 |
一般住宅 | 0円 | ― | |
既存住宅 | 長期優良住宅 | 3,000万円 | 10年間 |
一般住宅 | 2,000万円 | ― |
※参考:
※2025年に入居する場合
現在、新築住宅において省エネ対策などがされていない一般住宅は住宅ローン控除を活用できません。既存住宅でも、長期優良住宅と一般住宅では控除限度額が1,000万円も異なります。
また、その他にも以下の3つの税金で減税措置を受けられます。
<登録免許税>
本則 | 一般住宅特例 | 長期優良住宅 | |
---|---|---|---|
所有権保存登記 | 0.4% | 0.15% | 0.1% |
所有権移転登記 | 2.0% | 0.3% | 戸建て:0.2% マンション:0.1% |
※参考:
<不動産取得税>
一般住宅 | 長期優良住宅 | |
---|---|---|
課税標準からの控除額 | 1,200万円 | 1,300万円 |
※参考:
<固定資産税で1/2の減額措置を受けられる期間>
一般住宅特例 | 長期優良住宅 | |
---|---|---|
2階以上の戸建て | 3年間 | 5年間 |
マンションなど | 5年間 | 7年間 |
※参考:
登録免許税と不動産取得税は住宅の購入時にかかる費用で、固定資産税は住宅を所有している限り支払う必要があります。減税措置を受けられると、初期費用とランニングコストのどちらにおいても大きなメリットとなるでしょう。
『子育てエコホーム支援事業』や『長期優良住宅化リフォーム推進事業』など、長期優良住宅の新築やリフォームで補助金を得られる制度はさまざまです。
長期優良住宅は他の住宅と比べてコストが大きくなりますが、補助金制度を活用することでコストの一部を抑えることができます。
実施されている制度は年度によって異なるため、住宅を取得したら現行の制度を調べてみましょう。※参考:
ここでは、長期優良住宅の認定を受けるデメリットを見ていきましょう。
順番に解説します。
長期優良住宅の認定を受けるには、耐震性や省エネルギー性などを向上させる必要があります。
高性能な材料や設備を導入するケースが多く、建築コストが割高になるでしょう。認定手続きの際に申請費用も発生する点も、把握しておくことが重要です。
長期優良住宅では、維持管理や保全計画に基づいた点検やメンテナンスが求められます。
申請時に提出した計画通りに点検やメンテナンスが行われていない場合、これまで受けた減税分の金額や補助金を請求されるおそれがあります。点検費用やメンテナンス費用が発生するため、事前に相場を確認しておくことがおすすめです。
※参考:
ここでは、長期優良住宅の認定を受ける流れを以下4つのステップから見ていきましょう。
それぞれ解説します。
※参考:
新築戸建(木造軸組)編 長期優良住宅認定制度の技術基準の概要について丨国土交通省
この際、設計図面や計画内容に基づき、耐震性や省エネルギー性能、劣化対策などの基準を満たしているか審査されます。
居住地の登録住宅性能評価機関は国土交通省のページなどから調べましょう。紛失しないよう保管しておきましょう。
所轄行政庁へ、交付された確認書と認定申請書や添付図書などを提出し、長期優良住宅の認定申請を行います。行政庁は提出された確認書や必要書類などを審査して、認定基準を満たした場合に認定通知書を発行します。
申請は着工前までに完了している必要があるため、スケジュールに余裕を持っておくことが重要です。長期優良住宅の認定を受けたら、計画通りに住宅工事を進めます。工事が完了した段階で必要に応じて確認書類を整え、最終的な確認を受けることがあります。
工事が完了した後も、計画通りの点検やメンテナンス、その記録の保管が必要です。ここでは、長期優良住宅の認定条件に関してよくある質問を紹介します。
疑問の解消にお役立てください。
認定書には、建築時に取得した耐震性や省エネルギー性能など、基準を満たしているか記載されています。
また、担当した不動産会社や施工業者に問い合わせると、過去の申請状況や認定内容を確認できるケースがあります。
認定を取り消すには、居住地がある自治体に維持保全計画の中止を申し出ましょう。変更が必要な理由や状況を説明する書類を提出すれば、取り消しが認められる可能性があります。
ただし、これまで受けた補助金の返金を求められる場合があるため、注意してください。一般的に、長期優良住宅の認定を受けた建売住宅は少ない傾向にあります。建売住宅は建築コストを抑える目的で、認定条件を満たしていないケースが多いのが理由として挙げられます。
ただし、最近では長期優良住宅として販売される建売も増加しているため、購入時に確認しましょう。この記事では、長期優良住宅の認定条件について解説しました。
長期優良住宅は、長期間に渡って良好な状態で使用できる住宅のことです。さまざまな減税制度や補助金制度で優遇を受けられますが、高い耐震性や省エネ性が必要です。
また、長期優良住宅の場合、申請時に提出した維持保全計画通りに点検やメンテナンスを実施する必要があります。
長期優良住宅の取得を検討している人は認定条件を確かめたうえで、今後のランニングコストを踏まえて選択することが重要です。記事監修
宅地建物取引士/2級ファイナンシャル・プランニング技能士
最新のトレンドや法改正を踏まえ、円滑な住宅売買に向けた仕組み作りと前線でのサポートを実践する。「ちんたいグランプリ(旧・不動産甲子園)」 2020年度・2022年度特別賞。
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